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2020/10/31

私たちにとって庭とは? 自然とは?

 建物の2階へ進む。階段を上りきったところに広がる空間には、みずから発光しているかのごとく黄金色に輝く三角の存在があった。小林正人による作品《Unnamed #66》だ。

小林正人《Unnamed #66》

 床に直置きされて、ところどころヨレてシワが寄ったりまでしているけれど、これはどこまでも絵画の在り方を追求してきた結果としてあるカタチなのだという。壁に沿ってほぼ平面に収まっているはずの一点の「絵画」が、完全に場を領して圧倒している。

 いくつも連なる小部屋を渡り歩いていくと、部屋を移るたび作品が生み出す空間の「色」がまったく異なるのを感じる。志村信裕《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》は、一部屋を丸ごと使ったインスタレーション。美しく照らされた楽譜があって、眺めているとそこにはないはずの音まで聴こえてきそうである。

志村信裕《光の曝書(メンデルスゾーンの楽譜)》

 別の部屋には、佐々木愛《鳥たちが見た夢》があった。ロイヤルアイシングという手法を用いて、砂糖で絵を描いてある。いずれはこの図像も崩れてしまうのであろう……。そんなことを強く意識せざるを得ない繊細な図像は、儚げであればあるほど眼の奥に焼き付いて離れない。自然物や風景をモチーフに創作された康夏奈の作品も、大いに存在感を発揮しており、8人のアーティストの作品はそれぞれに、この名建築や名園と見事に呼応していると知れる。

佐々木愛《鳥たちが見た夢》
康夏奈「Cosmic Cactus」シリーズ

 私たちにとって庭とは? 自然とは? 外界とはどんな存在なのだろう? 浴びるようにさまざまなタイプの「美」を体感しながら、そんなことをぼんやりと考える時間をぜひ過ごしてみたい。

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