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“探訪・東京都庭園美術館” 宮家の麗しき庭園の中で、8人の現代アーティストの自然観を感じる

アート・ジャーナル

2020/10/31

 秋の佳き日が続くこのごろ。人混みは避けつつも、ふらりいい外気を吸いに出かけたいところではないか。

 凛として澄んだ空気に満ちた、こんな空間に身を置きにいくのはどうだろう。東京目黒の東京都庭園美術館。現在は「生命の庭 8人の現代作家が見つけた小宇宙」展を開催中だ。

名園の脇で、庭がテーマの作品群を観る

 東京都庭園美術館といえば、その名の通り、ここが都心であることを忘れ去ってしまいそうなロケーションにある。敷地はもともと朝香宮の邸宅だったところ。広い芝庭は見事に整備された芝生で覆われており、周りを大樹が取り囲んでいる。奥には西洋庭園と日本庭園も備えている。

 庭の中心地には洋館が建つ。1933年に姿を現したアール・デコ様式の屋敷である。戦前は旧朝香宮邸として用いられ、戦後になると吉田茂外相・首相公邸や、国賓公賓を招く迎賓館として使われる時期が続いた。そうして1983年からは、美術館に転用されることとなり、現在に至る。

 

 館内で展開されている「生命の庭」展は、8人のアーティストが、庭をテーマにそれぞれの持ち場を構築するグループ展。作家ごと、バラエティ豊かな自然観を垣間見ることができて興味深い。

 白亜の建築のエントランスをくぐり、1階の展示スペースへ足を踏み入れると、まずはガラス素材が外光を眩しく反射している青木美歌の立体作品と出逢う。彼女がモチーフとするのは菌類、ウイルス、細胞といったミクロの世界。光を発する摩訶不思議な形態の数々は、生命の輝きそのものを表しているかのよう。

青木美歌《Wonder》

 天井の高い壁面には、淺井裕介の大作絵画が掛かる。動植物の姿が組んず解れつしながら、壮大な模様を成していて、いくら長い時間をかけて眺めていても、いっこうに見切った気持ちにはならないのだった。

山口啓介《香水塔と花箱》
淺井裕介《野生の星》

 奥の部屋へと入っていくと、窓際にある大きくて奇妙な立体物が目に飛び込んでくる。加藤泉による彫刻作品だ。胎児か宇宙生命体なのかわからぬが、オリジナリティあふれる造形の「ヒトガタ」のモノが佇んでいて、思わず「ここで何をしていらっしゃる?」と話しかけたくなってしまう。

加藤泉《無題》

 隣の部屋では、山口啓介によるインスタレーションが展開される。花やその種を天然樹脂で固めた「カセットプラント」シリーズ。陽の光に照らされた花々を眺めていると、ここも外の庭と直結しているのだなと実感する。