織田信長と豊臣秀吉が天下人として君臨した安土桃山時代は、日本史上に稀な大動乱期。合戦やら暗殺やらと出来事も派手だし、戦国武将ら登場する人物も「キャラが立っている」。
そんな時代の美術って、はたしてどんなものだった? という疑問に応えるべく始まったのが、東京国立博物館での特別展「桃山―天下人の100年」。
日本美術の豊富なバリエーションを実見
全国各地から約230件もの優品を集めた大展覧会である。そこから観てとれる「安土桃山時代の美術って?」という疑問への答えは、ひと言に尽きる。政治社会の動向と同じ。すなわち、ド派手でキャラ立ちしまくっているのだ。
まあそれも当然といえば当然。美術とはそのときどきの政治経済社会の産物であり、人の暮らしと密接にリンクしているに決まっている。いわば、時代の空気を可視化したものなのだ。
ふつう日本の美術といえば、西洋美術のこってりギラギラした油彩画や、劇的な彫刻に比して淡白な味わいとのイメージだろう。だが少なくとも、安土桃山時代にかぎってはそうじゃない。派手な色彩や奇抜な形態を持ち味にした作品がゴロゴロとある。
たとえば今展の会場に入ってすぐに出くわす《洛中洛外図屏風》。屏風の大画面いっぱいに、今で言う空撮風の視点から京の都の様子が描かれる。
立ち込める金色の雲の合間から覗く、寺社の朱塗りの柱や屋敷の瓦。細部に目を凝らせば、そこかしこでそれぞれの暮らしを営む人々の姿が。細部を膨大に積み重ねることで、煌びやかな世界が築かれている。実際の都市の成り立ち方そのものを、一双の屏風内で見事に表現していると見ることもできそうだ。