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「仲良し集団」や「馴れ合い」の空気はない

 翌日の第3戦は、秋山拓巳が仁王立ちした。原口と同期入団の生え抜き11年目は、序盤からストレート勝負で圧倒。球速は140キロ台中盤がやっとでも、岡本和真のバットは空を切り、坂本勇人を詰まらせた。最後までマウンドに立ち続け、2失点完投勝利で9勝目。そんな右腕を強力援護したのは、陽川尚将だ。6番・右翼で先発出場した大砲は、5回2死一塁の好機で畠世周のカットボールを振り抜いて左翼席上段に突き刺す5号2ラン。“ゴリラキャラ”で定着する強面は、正反対の満面の笑みを浮かべながら胸を叩くお決まりのポーズで喜びを表現した。

©スポーツニッポン

 第1戦でエース・西勇輝とバッテリーを組んだのは梅野隆太郎で、今季80試合以上でスタメンマスクをかぶる揺るがぬ正捕手。2番手で3者連続三振を奪った岩貞祐太も、シーズン中の配置転換以降、ブルペンに欠かせぬ存在になっている。各々が与えられた役割で仕事を果たし、ライバルからもぎ取った2勝。奇しくも、同世代の男たちが示した意地は来季へとつながる「必然の輝き」だと思いたい。近本光司や大山悠輔と下の世代も主力に成長しているとはいえ、年齢的にも脂の乗りきった「中堅」選手たちが屋台骨を支えてこそ、若手への重圧も軽減され、相乗効果も生まれていくからだ。

 特に梅野、岩貞、岩崎、陽川の4人はキャンプ前に沖縄で合同自主トレを敢行するなど結束も固めてきた。かといって「仲良し集団」や「馴れ合い」の空気はない。岩崎、岩貞は同じ左腕で今年はブルペンでともに切磋琢磨し、意識し合う間柄。正捕手・梅野への原口の視線も同じなはずだ。対戦相手だけでなく、チーム内でこの世代がバチバチと互いにしのぎを削ることで自然と戦力の底上げにもつながっていく。

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 歳下の選手が増え始めた数年前から秋山は、「後輩にも何かあればアドバイスしていきたい。そういう年齢になってきた」と強い自覚をにじませてきた。巨人戦で9回を投げ切った後の敵地でのヒーローインタビュー。背番号46は「ちょっと(チームの)東京ドームでの対戦成績は悪かったですけど、最後にこうしていい姿を見せられたんで。来年以降も熱い応援、よろしくお願いします!」と宣言した。2021年を見据える視線はどれも鋭い。“三十路の虎たち”が、タイガースの新たな象徴になる。

チャリコ遠藤(スポーツニッポン)

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