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阪神・糸原健斗の夢を叶えた小学生6年生の想い

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/10/09

 質問です。あなたは、プロ野球選手の夢を叶えることはできると思いますか?

 1か月前の私ならそんなことできるはずないと答えていただろう。みなさんはどうだろうか? そもそもプロ野球選手は、「野球選手になりたい」という夢を既に叶えている。タイトルを獲りたい、2000安打達成、200勝などの目標はあっても夢というワードはしっくりこない。これらの“目標”をファンである私たちが達成することはもちろんできない。しかし、“夢”があった場合は叶えることが出来るのだ。

「糸原選手みたいになりたい」

 先月、プロ野球選手の夢を叶えた小学生に出会った。夢のお手伝いをしてもらったのは糸原健斗だ。7月22日の広島戦で右手有鉤骨を折り、同28日に手術。驚異的なスピードで回復し9月4日に1軍に合流していた。同5日に守備で1軍復帰を果たし、7日の巨人戦で47日ぶりにスターティングメンバーに名を連ねた。2点を追う9回。先頭打者として打席に向かった。巨人のクローザー、デラロサが投じた初球。151キロをフルスイング。打球は左翼ポールのわずか右に飛び込んだ。チームは敗れたものの、キャプテンとして意地の一発だった。

 小野陽翔(はると)君は奈良県の疋田ボーイズに所属する小学6年生。「身体が小さいから大きい人に負けないように練習しています」。そんな練習熱心な陽翔君は大の糸原ファンだ。「僕と同じで身長は低いけど、チームの戦力になっているし人一倍練習しているからです」。陽翔君は132センチ、30キロ。小学6年生の平均よりも10センチほど小さい。下級生も混じる入場行進の指定席は一番後ろだ。

小野陽翔君

 父・翼さんは糸原が阪神に入団して陽翔君は別人のように前向きになったと話す。「それまでは小さいことはコンプレックスというより、もう諦めている感じでした。小さいから力がなくて打球が飛ばない、高い送球は届かない、走っても歩幅が足りないと色々言っていました」。しかし、2017年、糸原が阪神の選手として活躍する姿を目にするようになり小さいことを言い訳にしなくなったという。

「糸原選手みたいにチームの中心選手になりたい!」。疋田ボーイズに入団してからは憧れのセカンドをなかなか守ることができずライトを守ることが多かった。しかし、“糸原選手が守るセカンド”に強いこだわりがあり、セカンドを守るため、チームの中心選手になるためにナイター中継の時間は自らの練習時間に充てた。練習中も「糸原選手みたいになるねん!」と何度も口にし、「陽翔にとって本当に憧れのプロ野球選手であり、目標とする選手なんだと思います」と翼さんも嬉しそうに練習に付き合っている。