昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

福留、藤川、能見のいない2021年の阪神を支えるのは“三十路の虎たち”だ

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/11/03

 マスク姿の矢野燿大監督が、力強く右手を突き上げる。本当に久々に見た気がする「矢野ガッツ」。10月26日のプロ野球ドラフト会議で阪神タイガースはアマチュア球界No.1野手の呼び声高い近畿大学・佐藤輝明の交渉権を抽選で4球団競合の末に獲得した。その後も、即戦力を中心に育成枠も含め計9人を指名。コロナ禍の今年は開幕が遅れたプロ野球のシーズン中に「運命の1日」を迎えていた。それもあってか、新たな9つの“希望”が、プロへの扉に手をかける瞬間は、同時に世代交代を感じる今のチームとのコントラストを色濃く感じた。

「伝統の一戦」で躍動した20代ラストイヤーを送る同世代の面々

 その前日、東京ドームでは今季限りでの現役引退を表明している藤川球児が、敵地に最後の別れを告げていた。登板こそなかったが、激闘の記憶を思い返すように試合後、グラウンドに出て両軍のファンに手を振った。長年、最終回を守った絶対守護神だけでなく、チーム最年長の福留孝介、タテジマ一筋16年の生え抜き・能見篤史が来季の戦力構想から外れたことも明らかになっていた。入れ替わりの激しいプロの世界。ベテランの退団は今年に限ったことでなくても、やはり藤川、能見、福留のいない“2021年の阪神”を想像すると、今は違和感の方が強くなってしまう。残した数字での貢献だけではなく、3人が精神的支柱として果たしてきた役割は計り知れない。どちらかと言えば数字以外の部分でチームに大きな穴が開いてしまうのは否定できない。

 ならば、誰がその穴を埋め転換期を迎えたチームを引っ張っていくのか。はっきりとは見えなくても、そのヒントは敵地で最後の3連戦となった10月23日からの巨人戦にあった気がする。今季、開幕3連敗を始め、常に力の差を見せつけられる形になった「伝統の一戦」。11月10日の最終戦を残して8勝15敗の結果がすべてを物語る。そんな中で、今年初めて東京ドームで勝ち越したのが今回の3連戦。躍動したのは、20代ラストイヤーを送る同世代の面々だった。

 2戦目で今季4戦4敗を喫していた菅野智之から決勝の適時打を放ったのは、高卒で入団し11年目を迎えた原口文仁。18年以来、2年ぶりとなった球界のエースとの対戦で直球をセンターへ弾き返した。捕手での出場は少ないものの、持ち前の勝負強さはチーム随一。3試合連続で得点圏の状況で打点をマークして、後輩の高橋遥人に白星を付けた。

原口文仁

 マウンドでは、岩崎優が力を誇示した。8回に3番手で登板すると、意地を見せたのは1死一塁で吉川尚輝を迎えたシーン。6月19日の開幕戦で同じ2対1の状況で吉川に右翼へ逆転2ランを被弾していた。以降、対戦機会はなく今回が4カ月ぶりのマッチアップ。最後はスライダーで空を切らせ、悪夢を払拭して見せた。

©スポーツニッポン