シングル・ファーザーと上院議員の二足のわらじを履くなかで、バイデンはデラウェア大学に通うジルに出会う。最初の食事で2人は恋に落ちたという。1977年に結婚したことで、男3人の生活にジルという光がともった。ジルはバイデンの母をステップマザー(義母)と呼ばずに、マムと呼ぶことに決めた。亡くなった自分の母のことは、これまで呼んできたようにマミーのままだ。
その後、2人の間に娘のアシュリーが生まれ、新しい家族の形ができあがっていく。ジルは3人の子供を育てながら英語教育の博士号を取得する。セカンドレディのときもフルタイムで、大学で教鞭をとった。ファーストレディになってもフルタイムの教員の仕事は続けると宣言している。
2人の息子は、軍隊に行き弁護士の資格も取った。ジルは兵士のママであり、軍人の生活改善に力を入れる。
再びバイデン家を襲った悲劇
だが、この家族には再び不幸が訪れる。バイデンが副大統領だった2015年に、デラウェア州の司法長官を務めていた長男のボーを脳腫瘍で失ったのだ。その際の映像ではジルがバイデンを守ろうとしているのが映像越しに伝わっていたと思う。常にジルがバイデンの背中に守るように手を回していた。2016年大統領選挙にバイデンが出馬しなかったのはこのショックの影響だったと言われている。
重大な決定するときには、必ずジルが背後からバイデンを支えている。バイデンは2008年に民主党の予備選挙に挑戦しているが、「あなたこそがこの国の大統領にふさわしい」と背中を押したのはジルだった。この挑戦がなければ、副大統領に指名されていなかったかもしれない。当然、ジルがいなければ今回の大統領選挙を戦ってこられなかっただろう。
オバマの妻ミシェル夫人は、政党を超えて働く女性から尊敬されていた。オバマが当選した2008年大統領選挙のときには、共和党で働く女性たちが「ミット・ロムニー(共和党上院議員)やマケイン(元共和党上院議員、2008年大統領選挙でオバマに惨敗)の妻よりも、ミシェルのほうが今のアメリカを体現している」と話しているのを耳にした。
ジルはそのミシェルと並ぶスーパーレディである。早起きしてジョギングする姿を知る孫たちは「スーパーグランマ」と呼ぶ。
ジル夫人が、今回の大統領選挙で最もミレニアルの時代に相応しい人物といえよう。これからのジル夫人に注目である。