異例の展開を見せたアメリカ大統領選。トランプ大統領との激戦の末、民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にした。
バイデン大統領が誕生するとなると注目されることになるのが、新ファーストレディとなるジル夫人とその家族だ。分断するアメリカの現状を解き明かした著書『隠れトランプのアメリカ』(扶桑社)の著者、東洋大学教授の横江公美氏が解説する。
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米大統領選投票日の深夜にあたる11月4日未明、バイデン前副大統領が「勝利への道筋にあると確信している」と演説した時、象徴的なシーンがあった。
バイデンの隣に立っていたジル夫人が、バイデンの演説に誰よりも早く、賛同の拍手を送ったのだ。アメリカでも、横に立つ夫人は演説に頷くくらいが一般的。このジル夫人の姿勢が、彼女がバイデンにとって最強の“チアリーダー”とも言われる所以なのだ。
新ファーストレディの素顔は?
バイデン夫人のジルとはどんな人物なのだろうか。
今回の大統領選挙の期間中、バイデンはトランプとの差別化を図るために、リモートで専門家に話を聞くキャンペーン動画を流し続けた。そのキャンペーン動画に、選挙戦の終盤からジル夫人が登場するようになった。「ジル夫人と一緒のほうが、イメージがいい」と指摘され、バイデンの隣に座るようになった。
確かにジル夫人は尊敬されるべき女性である。彼女こそがバイデン家の守護神だ。
バイデンは29歳でデラウェア州選出の上院議員に当選したときに、自動車事故で妻と娘を同時に失った。当選の喜びもつかの間、3歳の息子ボーと2歳の息子ハンターを抱えるシングル・ファーザーとなった。
当時、バイデンが住むデラウェアからワシントンDCまではアムトラック(鉄道)で片道1時間かかった。通常だと、上院議員はワシントンDCに居を構えるが、バイデンは毎日、電車で通った。2人の息子と朝食をとり、一緒に過ごすためだ。