バイデンの息子に掛けられた疑惑
ただ、バイデンが家族思いであることで、思わぬとばっちりを受けることもある。
息子ハンターがウクライナの天然ガス企業プリスマの役員を2014年から務めていたことで、「2016年大統領選挙に向けて息子の不正疑惑を払拭するよう、ウクライナ司法当局に圧力をかけた」という疑いがかけられたのだ。
2019年10月にはウクライナが正式に「ハンター・バイデンに不正はなかった」ことを表明している。だが、今回の大統領選挙では再びこの疑惑が蒸し返された。
2020年9月23日にアメリカ議会上院がまとめた報告書で、「ハンター・バイデンは利益相反の疑いがある」と報告したのだ。アメリカ副大統領の息子が汚職疑惑のあるウクライナ企業の役員を務めたことで、米国務省の複数の当局者が「困った」と嘆いていたと記されている。汚職撲滅を阻止する利益相反の関係があるうえに、「犯罪、金融、スパイ防止、恐喝に関する懸念もある」と主張した。
実際には新たな事実も証拠も記されていないが、バイデンには痛かった。大統領選挙に向けたネガティブ・キャンペーン以外のなにものでもなかった。
過ぎた愛情が疑惑を招く?
ただ、バイデンが息子に甘いのは事実である。妻と娘を事故で亡くし、一人の息子を病気で失った影響もあるだろう。だから、前妻との息子であるハンター・ジルとの間に授かったアシュリーを溺愛しているのだ。ただ、愛情が過ぎれば時に思わぬ疑惑を招く。
ハンターはウクライナ企業の役員に就任する前年の2013年にコカイン使用が発覚してアメリカ海軍予備役で除隊処分を受けている。同年12月にはバイデン副大統領の中国公式訪問に同行し、2019年10月まで中国国営企業の支援を受けたファンド会社に在籍していたことも明らかになっている。
政治的な影響と関与を疑われやすい背景があるのは間違いない。息子に甘すぎるバイデンは、今後も共和党の標的になるだろう。
※本稿は横江公美氏の著書『隠れトランプのアメリカ』を抜粋、再編集したものです。