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「コロナにも効く?」「薬局はどう選べばいい?」第三波に備えるための漢方薬“4つのポイント”

2020/11/11
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医師の診察は受けた方が良い

 第2は「漢方医など医師の診察を受けることの重要性」である。

 症状も基礎疾患もないケースとは異なり、発熱、咳、痰、嗅覚・味覚障害などの疑わしい症状がある場合、あるいは肺疾患、心疾患、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある場合には、漢方医をはじめとする医師の診察を受けることが必須となる。なぜか。

 漢方医をはじめとする医師は「証(しょう)」、すなわち「もともとの体質、病気に対する反応などを含めた患者の状態」を詳しく診た上で、独自に調達した生薬(漢方薬の原材料)を組み合わせるなどして、その患者に合った漢方薬を煎じ薬などとして処方する。

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 患者の証を確かめるメルクマール(指標)には「虚(きょ)」「実(じつ)」「寒(かん)」「熱(ねつ)」などがあるが、例えば証の中でも最も重要とされる虚と実について言えば、それぞれ次のような状態を指すとされている。

 虚=気力が衰えて力が抜けている状態
 実=気力が充実して力が漲っている状態

人によって効き方は違う

 そして、長い歴史を持つ漢方専門医院として有名な修琴堂大塚医院の院長で横浜薬科大学特別招聘教授なども務める渡辺賢治医師は、このような漢方に特有の事情を前提に「同じ疾病に同じ漢方薬を処方しても、患者さんの証の違いによって、効き方が大きく変わってくるのです」と指摘する。

 典型例を紹介しよう。

修琴堂大塚医院の渡辺賢治院長

 今年2月、中国国家衛生健康委員会は新型コロナウイルス感染症のために開発された漢方薬「清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)」の著しい治療効果について、同薬を処方した全701症例における治癒率が実に94%以上にも達していた事実を公表した。

 実は、第1波が日本を襲った際、渡辺医師も台湾にいる知人の医師らに依頼して生薬を調達し、修琴堂大塚医院で清肺排毒湯を独自に調合した上で、PCR検査で陽性と判定された患者らにこれを煎じ薬として投与している。

「とくに興味深かったのは証の違う夫婦の患者さんのケースです。中国での投与量は多すぎると判断したため、私はその3分の1の量を投与しましたが、実の証である夫が清肺排毒湯に敏感に反応して短期間で治癒したのに対し、虚の証である妻は清肺排毒湯に対する反応が鈍く、倦怠感も長く残りました。

 その後、妻については、処方を藿香正気散(かっこうしょうきさん)に変えることで回復しましたが、完全に復調するまでの期間はやはり長引きました。実と虚は正反対の証にあたります。今回のケースでは、証の違いによって漢方薬の効き方や効き目が変わることを、あらためて実感させられました」(渡辺医師)