ドナルド・トランプ 米大統領
「一つの非常に小さな一歩に過ぎない。大したことではない」
朝日新聞 9月13日
トランプ米大統領は、12日に行われた国連安保理の決議について、「最終的に実現すべきことからはほど遠い」と述べ、制裁をさらに強めていく考えを強調した。決議の全会一致は評価しているものの、「大したことではない」「どんな効果があるかは分からない」としている。
言葉の背景には、安保理決議だけでは、制裁は不十分だというトランプ氏側の考えがある。今後、米国は北朝鮮と取引を行う中国の銀行などに対して独自の制裁を行い、核・ミサイル開発の資金源を断つことを目指すという(日本経済新聞 9月14日)。
「全ての選択肢がテーブルの上にある」と発言してきたトランプ氏だが、実際に先制攻撃はできないという見方が大勢を占める。なぜなら、日本と韓国が「人質」になっているからだ。北朝鮮は南北境界線近くにソウルを攻撃できる400門前後の長距離砲を配備しており、1時間に6000発以上の砲弾を浴びせることができる。また、日本を攻撃できる弾道ミサイル「ノドン」だけで約200発を保有している。米国が先制攻撃を仕掛けたら、日韓両国は「火の海」になる(WEBRONZA 9月14日)。ジェームズ・マティス国防長官は6月、北朝鮮と軍事衝突した場合は、「1953年(の朝鮮戦争)以来、見たこともないような極めて深刻な戦争となる」との見通しを示し、「それはわれわれが根本的に望まない戦争になるだろう」と述べている(WEBRONZA 9月14日)。
在英国際ジャーナリストの木村正人氏は、国家安全保障局(NSA)長官、中央情報局(CIA)長官を歴任したマイケル・ヘイデン氏に取材し、ヘイデン氏は核危機を回避するためには「トランプ政権が北朝鮮と協議すること」しかないと語ったという(Yahoo! 個人ニュース 9月14日)。しかし、米朝がこの問題について協議する見通しは今のところない。
ロイター通信のコラムニスト、ダニエル・R・デペトリス氏は、「ドナルド・トランプ氏は、北朝鮮問題で解決策を見いだすのに失敗した歴代米最高司令官の長いリストに、新たに名を連ねる大統領となった」と記した(ロイター 9月14日)。白人至上主義者たちへの対応で非難に晒されたトランプ氏は、北朝鮮への対応でも窮地に追い込まれている。