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“女性の登用”だけではなく……

 これは均質な商品を大量に生産して販売することで経済大国化していく局面ではよく機能したが、コロナ禍のような「予期せぬ事態に次々と直面する時代には全く対応できない」と断言する。

「日本においてダイバーシティという言葉は、女性の登用という文脈だけで語られがちです。しかし経営者にとってダイバーシティの本質は、異質な才能を多く取り込み、組織のパフォーマンスを最大化することのはずです」

「生物進化において、遺伝子に多様性のない種は急な気候変動などで絶滅してしまうことが明らかなように、企業も、危機に瀕した時や環境が激変する時、多様な人材から組成された組織の方が絶対的に強い」

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「思考パターンのほか、どういうストレスに強いか、誰も持っていない特技を持ち合わせているか――そうした点でバラエティある人材を揃えることが肝要です」

©文藝春秋

 これとは反対に、多様性のない組織で出世する人は「この案件は誰々を通しておいた方がいい」といった人的資源情報に通じている。南場氏はそう指摘した上で、「ノウ・ハウでなくノウ・フーと呼ばれるそうした内輪向けの知見は、一歩会社の外に出ると、通用しません」と語る。

「オールラウンドな優等生」は本当に優秀か?

 2つ目の「スタートアップ企業の質と量を格段に拡大」について南場氏は、かねてより指摘があり、リスクマネーの供給も潤沢になっているのに「母数が圧倒的に少ない」という。その原因はなぜか。

「日本では『他人がやらないこと』に夢中になれる人材が、欧米諸国と比べ非常に少ない。日本の子どもは幼稚園からずっと、夢中になれることを一つ一つ手放していくような教育を施されています。例えば昆虫が好きなのに算数が苦手となると、『虫捕りなんてやめて算数の勉強をしなさい』と諭されて育てられる。こうして異端の才能の芽は摘まれてしまいます」