「20年後には国力を2倍にできる」
新型コロナ感染症をめぐって日本は相対的にダメージが少ないと言われる。この優位を利用して、日本経済は再生に向けた成長戦略を描けるのか――そんな問いを携え、IT大手のDeNA代表取締役会長の南場智子氏にインタビューすると、こんな言葉が飛び出した。
菅義偉政権の成長戦略会議委員に就任した南場氏が強調するのは、「他人がやらないことに夢中になれる才能」の育成と、「多様な人材から組織を組成する」という日本の苦手分野の克服だ。
「GAFAのような企業になるべきだった」
DeNAは1999年にITベンチャーとして創業し、2000年代にはモバゲーがヒット。今ではDeNAベイスターズやライブストリーミング事業、ヘルスケア事業まで多角的に事業を展開する。
成長戦略を考える上で南場氏は「やみくもにやればいいわけではなく、領域を絞り、戦略的にトップを狙える分野で勝ちに行くのがカギ」と言う。そして分野を見定め、攻めるにあたって「国は力んでくれるな」という表現で、徹底した規制緩和を求める。では米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)のような技術革新をどう引き出すのか。
南場氏は「本来、GAFAのような世界中の人々の生活を変えてしまうような企業になるべきだったのは私たちですから、これは自分自身の負けを認めることでもあり、忸怩たる思いもあります」と述べた上で、「今を起点にするならば肝は2つある」と話す。
その2つとは、「人材の流動化」と「スタートアップ企業の質と量を格段に拡大すること」だ。
ダイバーシティが欠落している日本企業
「人材の流動化」を求めるのは、日本の大企業にダイバーシティ(多様性)が決定的に欠落しているからだと南場氏は指摘する。
「日本の企業社会は直線的で、子どもの時から敷かれたレールに沿って進路を選んできた優等生が新卒一括採用で大企業に入り込み、その後、40年を同じ社内で出世を争う。そして同質的な人だけで経営陣を形成するのが一般的です」