「その結果、武闘派で名が通る加藤連合会の2つの傘下組織がともにメンツをつぶされた格好となってしまった。ヤクザとしては許しがたいことだっただろう」(前出・指定暴力団幹部)
この瞬間から、加藤連合会の有力組織である「賢総業・聡仁組VSナチュラル」という対立構造となった。そして、加藤連合会系の暴力団組員らが一斉に、歌舞伎町の街中でスカウトに対して攻撃に出ることとなったのだ。
怯えながら過ごしたスカウトたち
そして6月4日深夜、加藤連合会傘下の賢総業と聡仁組の組員が、歌舞伎町の「区役所通」を中心に、スカウトを見つけては誰何し、大人数で取り囲んで、殴る蹴るの暴行を加えていった。
「お前、ナチュラルだろう!」
「スカウトをやってんだろう?」
なかには反撃に出たスカウトもいたが、多勢に無勢だった。加藤連合会系組員は100人前後を動員しての乱闘騒ぎとなった。
逃げまどうスカウトをヤクザが追いかけ回し、捕まえては暴行を加える様子の動画が撮影されており、後にネット上で「スカウト狩り」とのタイトルで拡散した。
事態を重く見た警視庁組織犯罪対策4課は新宿署に捜査本部を設置。歌舞伎町内に設置されている多数の防犯カメラで撮影された暴行現場の画像を収集して分析するなど、本格的な捜査が進められた。
約4カ月に及ぶ捜査のすえ、悪質な暴力行為に及んでいた実行犯らを特定し、警視庁は10月28日、傷害や暴力行為等処罰法違反容疑で、賢総業幹部ら2人と聡仁組の2人、スカウト側3人の計7人を逮捕した。
スカウト側は「木山兄弟」の通称で知られた3人だった。逮捕容疑はいずれも今年6月4日深夜、暴力団組員らとスカウトがお互いに殴ったほか投げ飛ばすなどの暴行を加え、一部のスカウトらに軽傷を負わせたといったものだった。
この事件で警視庁が立件したのは、6月4日の夜に起きた区役所通でのスカウト狩りに限定した暴力行為だった。今回の立件対象とはならなかったが、加藤連合会傘下の暴力団組員らによるスカウト狩りは翌日以降も地域を拡大して行われた。
6月5日以降、木山兄弟は歌舞伎町から姿を消した。残されたスカウトたちは震え上がり、怯えながら過ごすこととなった。(敬称略)