「おい! この野郎。お前! スカウトだろう」
日本最大の繁華街である東京・新宿の歌舞伎町。6月4日の深夜に怒号が響き渡り、多数の暴力団組員がスカウトの男性を追いかけまわしては暴行を加える「スカウト狩り」の大騒動が起きた。
スカウトを追う男たちの数は、最終的に100人ほどに膨れ上がったという。乱闘の様子は動画に撮影され、インターネット上に流出し注目を集めた。
その後、警視庁は捜査本部を新宿署に設置して捜査を進め、10月28日、乱闘に関与した暴力団幹部ら4人とスカウトグループの3人を逮捕。一応の決着となったが、スカウト狩りが歌舞伎町の夜の街で働く人々に植え付けた恐怖感、そして彼らの動揺は続いている。
歌舞伎町では、いったい何が起きたのだろうか。
原因は「スカウトの掟破り」
スカウト狩りの大騒動が起きた原因を作ったのは、やり手のスカウトグループ「ナチュラル」だった。
ナチュラルは、歌舞伎町だけでなく都内有数の繁華街である渋谷や六本木のほか、横浜など首都圏で幅広くスカウト業を展開。キャバクラやガールズバーなど接待を伴う「夜の街」の店に若い女性を紹介することで巨額の利益を得てきた。接待を伴う店だけでなく、風俗店も紹介先だった。
所属しているスカウトは数百人にも及び、歌舞伎町での仕事は10年以上続いていたという。歌舞伎町の飲食店業界に詳しい関係者が語る。
「実績があり、その仕事ぶりの確実さから、キャバクラなどの歌舞伎町のお店から信頼を寄せられていた。同じようにスカウトを行っている複数のグループとも良好な関係を保っていたと思う」
ところが、今年の春以降、「ナチュラル」が同業のライバル会社から腕利きの優秀なスカウトを次々と引き抜き始めたのだ。このことが夜の街で大問題となり、関係者の間で不満が鬱積していた。
「誰でもすぐに若くてきれいな女性をスカウトできるものではない。どの業界でも同じだろうが、スカウト会社も、新人スカウトをゼロから指導して、一人前にして夜の街に出す。若手を育てて、育てて、ようやく仕事ができるようになったというところで、ナチュラルから横取りのように引き抜きにあったら、それは怒る」(同前)
夜の街の掟が、公然と破られていたのだった。