〈自分はいわゆる愛煙家だったが、自分自身のためにも、きれいな環境のためにも、大変だろうがタバコをやめる決心をした〉

 Twitterで「禁煙への決意」をつぶやいたのは、北朝鮮高官の個人名義のアカウントだった――。

 北朝鮮当局や団体ではなく、個人名義のTwitterアカウントが明らかになるのは極めて異例だ。このアカウントの主は、北朝鮮「祖国平和統一委員会部長」を名乗る金命一氏(@korea_myongil)。同時に、「祖国統一研究院室長」を名乗る韓成一氏(@korea_songil)のアカウントも見つかった。

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「聯合ニュース」が11月13日、「北朝鮮の金命一・祖国平和統一委員会部長と韓成一・祖国統一研究院室長のTwitterのアカウントが確認された」と報じるなど、韓国では報道が相次いだ。報じられたアカウントはいずれも10月1日に開設され、居住地は北朝鮮の平壌となっている。

韓成一氏(左)と金命一氏のアカウントの顔写真

 金氏が所属しているという「祖国平和統一委員会」は、1961年に設立された、韓国や海外の同胞に対する宣伝・扇動を行う機関だ。朝鮮労働党が2016年に国防委員会を廃止し、国務委員会を新設した際、党の外郭機関から国務委員会傘下の国家機構に昇格した。金正恩委員長が、対南宣伝扇動を強化することに重点を置いたためとみられる。1997年に韓国に亡命した、金正日の元側近・黄長燁氏も、1986年に「祖国平和統一委員会」副委員長を務めている。

 韓氏の「祖国統一研究院」は、その祖国平和統一委員会傘下の組織だ。金氏と韓氏のTwitterアカウントでは、祖国平和統一委員会が運営する対南宣伝メディア「わが民族同士」のアカウントだけをフォローしている。

「我がキムチが食欲をそそる」

 金氏と韓氏のツイートは、基本的には朝鮮語だが、英語と日本語のツイートもある。11月13日までにそれぞれ48件、33件のツイートが確認されている。1~2日に1回、投稿している計算だ。

 韓氏のアカウントは、10月1日の初投稿で、Twitterアカウントを開設した趣旨について、次のように説明している。

〈(北)朝鮮で起こった朗報と南北関係の消息を伝え、我が民族の文化や歴史など様々な常識を親切に伝え、今後、多くのインターネットユーザーとの積極的かつ多方面にわたる(意思)疎通に期待している〉

 いま北朝鮮では、2021年1月に5年ぶりに開催される党大会を控えて、全国民で災害の復旧や経済建設などにあたる「80日戦闘」の真っ只中。2人のアカウントでも、この「戦闘」の現状をはじめ体制宣伝をほぼ連日投稿しているのだが、異例だったのは個人的な生活に触れる内容も投稿されていたことだ。