北朝鮮の一般住民がTwitterアカウントを作り、外部世界と交流することなど無理。今回のTwitterの書き込みの内容も、北朝鮮の日常的な内容もあるが、大半が「わが民族同士」を初めとした既存の対外宣伝メディアの報道と大差ない。
たとえば、韓国の保守政党の第1野党代表の動きを批判したり、在韓米軍を非難する文章も投稿されている。韓氏は10月31日、次のように投稿した。
〈釜山港にある米軍の細菌実験室に何があるのか。炭疽菌、ボツリヌス菌、各種生物化学兵器……知られているだけでもこうなのだから、実情はもっと悲惨だろう。米国の生物化学戦の前哨基地である南朝鮮(韓国)。これを見ると私はどうしてもベイルート港の大惨事を思い出す〉
これは10月19日、釜山港の米軍の細菌実験室の閉鎖をめぐる住民投票についての記者会見が釜山市議会で開かれたことを受けたツイートだ。韓国の左派らに、米軍の細菌実験室の閉鎖に賛成するように促すサインを送っているとも読める。北朝鮮は以前から在韓米軍の撤退を絶えず主張している。韓氏のツイートは、それに沿ったものだ。
突然削除されたアカウント
そんな2人のアカウントだったが、開設から約1カ月半後、突然削除された。11月13日まで運営されたものと推定されるが、聯合ニュースなどが詳細を報じたためなのか、あっという間に姿を消した。
「自由アジア放送(RFA)」が、Twitter社側にこの2つのアカウントのユーザーがアカウントを削除したのか尋ねると、「現在、共有できる事項はない」と答えたという。
金氏のアカウントには、〈自分の地に足をつけ、目は世界を見よ〉というスローガンが掲げられていた。これは、金正日総書記が生前に北朝鮮市民に掲げた言葉だ。しかし、今回のアカウント閉鎖で、自らその「目」を閉じてしまった格好だ。
北朝鮮の国民が個人アカウントを取得して、自らの生活を自由にツイートできる日は、いつ来るのだろうか。