〈国民が北朝鮮軍の銃に撃たれて死亡したのに、(北朝鮮と)観光を再開して終戦宣言を求めようというのがまともな精神状態なのか〉

 いま韓国の文在寅政権に、そんな批判が殺到している。この一文は、韓国の3大紙の一つ「中央日報」の社説(9月29日付)の引用。タイトルは、「北朝鮮の顔色伺いをしながら言いなりになる文大統領には失望だ」と強烈だ。

 北朝鮮軍が軍事境界線の海域に漂流していた韓国人を射殺して焼却処分――そんな“蛮行”後にもかかわらず、北朝鮮に融和的な発言を続ける文在寅大統領。さらに、その渦中で与党が「朝鮮戦争の終戦宣言」や「個別観光」を求める決議案を上程するに至り、国民から文在寅政権に批判が集まっているのだ。

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射殺して焼却処分するという“蛮行”だったが…… ©AFLO

遺体にガソリンを塗って火を付けた

 事件があったのは9月21日。北朝鮮に近い北西部にある延坪島(ヨンピョンド)周辺の海域で、違法漁業の取り締まりをしていた韓国海洋水産省所属の男性職員(47)が行方不明になった。男性の消息が明らかにされたのは24日。男性は救命胴衣を付けて漂流中に北朝鮮軍に発見され、北朝鮮軍に銃殺された上、遺体は焼かれたと韓国国防省が発表したのだ。

今回の事件現場に近い延坪島をパトロールする韓国軍の兵士たち ©AFLO

 在韓ジャーナリストの朴承珉氏が解説する。

「男性が浮遊物に掴まって漂流していたところを、北朝鮮軍に発見されたのは22日15時半ごろで、北朝鮮軍に船上から審問されました。ところが、北朝鮮軍は約6時間後の21時40分になって、男性を銃で射殺。さらに遺体にガソリンを塗って火を付けたのです。その残虐な顛末に、韓国国内でも動揺が広がりました」

 民間人に対しての異例の殺害行為。北朝鮮問題を韓国で長年取材する朴氏は、この思い切った行動には「金正恩の指示があった」と分析する。