「すべては金正恩の思惑通り」
これらの韓国国内の動揺は、金正恩の思惑通りに進んでいると、朴氏は見ている。
「米朝関係が膠着する中で、金正恩は韓国に対して、アメリカの言うことを聞かずに南北間で経済協力するようにプレッシャーを掛けています。しかし、いくら融和的とはいえ、国連安保理の制裁のため、そこまでは踏み込めない文在寅大統領に、金正恩は強い不満を持っているのです。
今回の金正恩の謝罪劇は、文在寅大統領が喜ぶことを見越しての判断。南北の関係が決定的に悪化することは避けつつ、韓国の国論を効果的に二分することに成功した。文在寅大統領を苦しめながらも『南北で手を取り合っていこう』という気持ちにさせたい、金正恩からの絶妙な“圧力”なのです」
前出の韓国駐在の日本人特派員は、ソウル市民が射殺事件後に口にした感想が印象に残っているという。
「韓国でも、今回の事件を受けて、『もし日本人に射殺されて、現場が独島(竹島)だったら、とんでもない大問題になるのに』と口にする人もいます。『朝鮮日報』にも、米タフツ大の北朝鮮専門家、イ・ソンユン教授の〈東京の中途半端な謝罪には激高する政府が、平壌の謝罪らしくない謝罪には、なぜこんなに感謝するのか〉とのTwitterへの投稿が紹介されていました。この文在寅政権のダブルスタンダードに違和感を拭えない人が、韓国でも保守派を中心に多い」
この騒動の最中、9月24日に文在寅大統領と電話会談した菅義偉首相は「極めて重要な隣国。北朝鮮問題をはじめ、日韓、日米韓の連携は重要だ」と伝えたという。
外交の常識が通じない東アジアで、菅首相は存在感を示せるのだろうか。