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「50センチくらいのが、じーっとこっちを…」熊を狩る猟師が語る怖すぎる体験談

漫画『山怪 弐 不死身の白鹿』(原作・田中康弘、漫画・五十嵐晃)

2020/11/26

genre : エンタメ, 読書

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騙しムジナとキツネ憑きの熊

 山形県南部、朝日連峰に囲まれた朝日村(現・鶴岡市)の大鳥池には、体長2~3メートルと言われ、今も生態が謎の巨大魚・タキタロウが棲む。

 ここでは「騙しムジナ」が語られている(ムジナ=タヌキ)。

 タヌキを仕留めて皮を剥ごうとすると、突然起き上がって逃げる。皮を剥いだのに逃げ出すタヌキもいる。

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 同様に「キツネ憑きの熊」がいる。マタギが追い詰めても逃げてしまう。数日かけて追い詰め、銃口を向けた瞬間、森に吸い込まれるように姿が見えなくなる。

「そういう熊が時々いてなぁ どうしても捕まえられねえ」

©五十嵐晃/田中康弘/リイド社

日本の山には説明のつかない怪異が存在する

 朝日村で知られるキツネの話がある。

 冬、ウサギ狩りに出た数人がそれぞれ収獲を持って集落へ戻った。1人が無線を忘れ、カンジキを再び付けて山へ入り、戻らなくなった。一晩で雪が60センチ積もり、大掛かりな捜索も叶わなかった。その年は雪が多く、それ以上探すことができなかった。雪が解けた5月、リュックを背負い、銃を肩に掛けたまま座った姿で見つかった。集落のすぐそば。誰もが一目置くマタギがこんな近くで遭難するはずなかった。

 ウサギが入っていたはずのリュックは空になっていた。ウサギを狙ったキツネに化かされて道に迷ったのだ――集落ではそう考えられている。

 これは10年ほど前の話である。

(「鶴岡市朝日地区」より)

 漫画を描いた水墨画家の五十嵐晃氏が話す。

「過酷な自然、動物たち、死生観……墨絵ならではの世界で、どんどん風化していく山人たちの貴重な話に誘います。日本の山には説明のつかない怪異が存在する。時の流れが速すぎる現代で、忘れかけた何かを感じてもらえれば嬉しいです」

 第3弾は2021年2月発売予定という。

山怪 弐 不死身の白鹿 (ボーダーコミックス)

五十嵐 晃、田中 康弘

リイド社

2020年7月20日 発売

「50センチくらいのが、じーっとこっちを…」熊を狩る猟師が語る怖すぎる体験談

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