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コンマ何秒のズレが不自然さにつながる

 あと、ありがちなのが、慣れてくると相手のセリフを聞き終える前に次のセリフを言っちゃうんだよね。言葉をかぶせてしまうのは論外ですが、この状況でこう言われたら、普通、少し間ができるだろうというところで、すぐに返してしまう。お客さんは瞬時に、不自然さを感じ取ってしまう。コンマ何秒のズレですが、そういう違和感は、お客さんに伝わってしまうものです。

 僕は土屋とのやり取りが惰性にならないよう、ネタ中に、まったく予定にないセリフをちょいちょい入れます。もちろん、土屋は素で「何を言い出すんですか」という顔をします。それがいい。やり過ぎは禁物ですが、ときどきかませば、土屋も「いつ何が飛んでくるかわからない」と緊張感を持ってこちらの話に耳を傾けるようになります。

うまいけど笑えないコンビ

 ときどき、うまいけど笑えないんだよなというコンビを見かけます。じっと観察していると、だいたい演者の言葉に気持ちが入っていません。言葉に気持ちを込めるといっても、単純に大声を出したりすればいいというものでもない。目線とか、体のちょっとした動きにも出てくる。

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 コンビ同士、仲がよくても悪くてもいいのですが、仲が悪いと、嫌々言ってる感じが露骨に出てしまうことがあります。それはまずい。そういうコンビは、目と目を合わさない。顔を見ないでしゃべりますから、言葉のやり取りが雑になります。それでは、笑いはとれません。

 そこへいくと、仲が悪くて有名なおぼん・こぼん師匠はさすがです。二人とも近づきたくないので、互いに距離をとって、目を合わさずに話すのですが、お客さんはゲラゲラ笑っています。不仲の年季が違いますからね。あそこまでいくともはや名人芸です。