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「アートの磁場転換」はシュルレアリスム

 第2章は「1930s――アートの磁場転換」。1930〜50年代の作品を扱っている。ミロ、ダリ、マグリット、デルヴォーらシュルレアリスムのアーティストたち。また、ポロック、モーリス・ルイス、サム・フランシスら第二次世界大戦後の米国で大いに名を馳せた面々がずらり。

第2章 ルネ・マグリットの展示

 20世紀も半ばまで進むと、アートの画面はますます摩訶不思議なものとなり、筆跡は跳ねたり、溶けたり、滲んだりし始める。外界をそっくり写し出すことに関心を示すことは稀で、人の無意識や内面世界をどう表現するかに、アーティストたちは躍起になっていることが窺える。

第2章 ジュアン・ミロの展示
第2章 モーリス・ルイス、サム・フランシスの展示

アーティストひとりずつが1つのジャンル

 第3章は「1960s――アートの多元化」と題される。20世紀後半はアートが際限なく多様化していった。歪んだ人間像を描くフランシス・ベーコンや、ポップアートを標榜したリキテンスタインやウォーホルらの作品からは、まさにアーティストひとりずつが一ジャンルを成しているような状況が浮かび上がる。

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 最小限の要素だけでアートをつくろうというミニマル・アートに、モノではなくてコトを作品と見なすコンセプチュアル・アート……。流派や流儀も刻々と増えていった。そうした混沌とする時代の様相が、よく伝わってくる展示になっている。

第3章の展示風景

 第1〜3章までを観て回ると、かなりしっかり20世紀美術をおさらいできた印象がある。驚くべきは、これらの展示品すべてが横浜美術館、愛知県美術館、富山県美術館いずれかのコレクションだということ。協働したから漏れなく構成できた面はあろうけれど、よくぞこれほどの収集を為してきたものだ。

 これら3館は、いずれも地域の「美の拠点」となってきた。20世紀西洋美術を手厚く収集してきた共通項があったゆえ、今回の企画が進むことになったという。

 これほど壮観な展覧会を組めるほどに、日本の美術館のコレクションは充実しているのだ。これは横浜、愛知、富山に限ったことではない。

 有名作品を海外からごっそり運んでくるのが叶わない時世を逆手にとって、それぞれの美術館が自前のコレクションを堂々と自慢する機会が、もっともっと増えてほしいところだ。

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トライアローグ
横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション
2020年11月14日〜2021年2月28日
横浜美術館