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「ピカソもクレーもウォーホルも、全部ある!」 美術館の自前コレクションで、充実の西洋20世紀美術をおさらいする

アート・ジャーナル

2020/12/05

 日本の美術館の底力を、目の当たりにした!

 横浜美術館で開催中の「トライアローグ」展を訪れると、そんな気分に浸ることができる。

横浜美術館

 同展の中身は、サブタイトルに集約されている。

「横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」というものだ。

 要は、それぞれの地域を代表する3つの美術館がコレクションを持ち寄って、20世紀西洋美術を概観できる展示を構成したわけである。

「なるほどコロナ禍で、本場西洋から作品を運んでくることは叶わない。そこで自前の作品を寄せ集めて、急場を凌いだわけ……?」

 

 と穿った見方をする向きもあるか。たしかにこのご時世に、国境を越えて作品を一挙に運ぶのは無理。「ならばコレクション作品を……」と発想するのも無理からぬところ。ただし、だ。決して、有り合わせの急場凌ぎなどではない。展示は作品の質・量・構成とも抜群の見応えを示しているのである。


ピカソもクレーもウォーホルも、全部ある!

 3つの章に分かれた展示は、時代順に作品が並ぶ。

 第1章は「1900s――アートの地殻変動」と題され、ムンク、ピカソ、マティス、カンディンスキー、クレー……。いずれも20世紀初頭の時代にあって、アートの革新を成し遂げた大家たちの作品が集められている。

第1章 パブロ・ピカソの展示

 なるほどもっと昔の西洋美術なら、神話の一場面や王・貴族たちの肖像などが、超絶的な技巧によって威風堂々と描き出されている作品が多かったものだ。

 20世紀に入ると、長らく培われてきたそうした伝統が、一挙に崩れ去る。社会全体が激動期だったのと呼応して、アートもまさに地殻変動を起こしたのだった。ピカソは人やモノの形態をグニャグニャに解体するし、マティスは色彩を自分の思うがままに操った。カンディンスキーに至っては、具体物を描くものという絵画の最も基本的な約束事を反故にして、抽象絵画なるものを始めてしまう始末だ。

第1章 ナウム・ガボ、カンディンスキーの展示

 アート作品上に現れた変化のうねりを、実作をたどって観られる貴重な空間となっている。