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《検察側のリベンジ》「桜を見る会・前夜祭」疑惑で安倍前首相まで辿り着けるか?

公設第1秘書は立件へ

2020/12/07

「安倍晋三前首相側が主催した『桜を見る会』の前夜祭の会費を安倍氏側が補填していたとされる疑惑を捜査している東京地検特捜部は、臨時国会が会期末の12月5日に予定通り閉会したことから、安倍氏本人から事情聴取したうえで、安倍氏の公設第1秘書を立件する方針です」

「桜を見る会」での安倍晋三氏 2016年4月 ©文藝春秋

 ある司法担当記者はこう語る。この公設秘書が代表を務め、一時会計責任者も兼務していた「安倍晋三後援会」は、2013~19年に東京都内の2つのホテルで「桜を見る会」の前日に夕食会を開催。19年までの5年間でホテル側への支払総額は約2300万円に上り、参加者1人5000円の会費だけで賄えない分は、安倍氏側が毎年100万円以上、多い年で約250万円を負担していたというのが疑惑の中身だ。

「補填した費用は5年間で900万円に上るとみられています。ホテル側は安倍氏が代表の資金管理団体『晋和会』宛ての領収書を発行していたことが、ホテル側が任意で特捜部に提出した会計書類で確認されています。公設第1秘書はこうした事実関係について、特捜部の任意聴取に認める供述をしています。しかし、後援会や晋和会の政治資金収支報告書には15~19年の夕食会に関する記載が全くないのです。

 このため、特に後援会の収入と支出の不記載額は総額で4000万円を上回る可能性があるのです。だから特捜部は政治資金規正法違反容疑で公設第1秘書を立件する方針を固めたというわけです。特捜部は公設第1秘書だけでなく、晋和会の会計責任者を務める私設秘書からもすでに事情聴取をしています。この私設秘書は安倍事務所の大物秘書として知られ、毎日新聞政治部記者時代に安倍氏の父・故晋太郎元外相と親交を深めた関係で新聞社退社後、安倍氏の秘書となった人物です。数年前までは政策秘書を務めていました」(同前)

安倍晋三前首相の父・安倍晋太郎元外相

 今年の5月に弁護士らから政治資金規正法違反容疑などでの告発状の提出を受けた特捜部では、安倍氏の首相辞任後、捜査に着手。臨時国会閉会後の立件をにらんで捜査を続けてきたという。

「特捜部は安倍氏側が領収書を廃棄したとみられることから、悪質な証拠隠滅として刑事訴追は免れないと判断したのです。来年1月に始まる通常国会での予算審議に影響を与えないよう、年内に在宅起訴か略式起訴する方針のようです。安倍氏が現職の首相時代の不祥事であり、現在の菅義偉政権は安倍政権を継承していることから、通常は検察内部でも『赤レンガ派』と呼ばれる法務官僚側が政権側に忖度し、特捜部に連なる『現場捜査派』にブレーキをかけるのですが、現状はそうなってはいません。

林真琴東京高検検事長と賭け麻雀問題で辞職した黒川弘務前東京高検検事長 ©時事通信社

 やはり安倍・菅ラインで牽引していた安倍政権下で、順風満帆と見られていた検事総長コースから危うく外されかけた林真琴総長が、捜査を容認していることが大きいようです。容認というより後押ししているという説まであるのです。林総長は、賭けマージャン問題で辞職した黒川弘務元東京高検検事長の後任として東京高検検事長に就任した際、検察と政治との距離について記者会見で問われると、『一定の距離を保って職務を遂行すべき』ときっぱりと言い切っています。林総長はその方針を現在も維持しているのです」(同前)

 総長を補佐する落合義和次長検事と、堺徹東京高検検事長という「元特捜検事」の検察首脳が特捜部をバックアップしているというのが、現在の法務・検察当局の捜査体制だ。

落合義和次長検事 ©共同通信社

「7月に東京地検特捜部長に就任した新河隆志氏は大阪地検特捜部の副部長として森友学園の問題に絡む背任や公文書毀棄容疑の捜査を担当し、不発に終わっています。大仰に言えば、安倍首相の“政治権力”の前に一敗地にまみれているわけです。前夜祭はリベンジマッチともいえるのです」(同前)

新河隆志東京地検特捜部長 ©時事通信社

 公設第1秘書は、公選法違反罪に問われている河井案里参院議員の選挙でも安倍氏の代理として辣腕を振るったとされる安倍事務所の大番頭だ。では、安倍氏自身は今回、立件されるのだろうか。どうやら、それは「ノー」のようだ。

「2019年11月に問題が発覚して以降、安倍氏は国会で『補填はなかった』と重ねて答弁してきましたが、晋和会の会計責任者を務める大物秘書は特捜部に対し、安倍氏に『補填はしていません』と事実と異なる説明をしていたと供述しているそうなのです。安倍氏も事情聴取には『補填は知らなかった』と説明するはずです。こうなると、安倍氏が補填を認識していたと証明することは難しくなります。

 安倍氏についても告発状が出ていますが、安倍氏自身は不起訴となるでしょう。不起訴となっても検察審査会が2度、『起訴相当』と議決すれば、小沢一郎衆院議員のように強制起訴されますが、小沢氏に『虚偽記載を報告し、了承を得た』とする元秘書の供述調書があった小沢氏のケースと安倍氏のケースは全く違うため、強制起訴もできないでしょう」(同前)

小沢一郎氏 ©文藝春秋

 森友学園、加計学園、そして桜を見る会と疑惑が次々と明らかになった安倍政権だったが、安倍氏本人は結局、逃げ切ったということになる。だが、故人を含めて実際には献金していない人の名前を政治資金収支報告書の献金者欄に記載していた「故人献金」や実母からの億単位の寄付があった「お小遣い問題」が発覚し、元秘書2人が立件された鳩山由紀夫首相(当時)の民主党政権時代を「暗黒時代」と揶揄していた安倍氏は、やはり同じ穴のムジナだったことが証明されることになる。

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