「法務・検察当局内部では、菅義偉首相が上川陽子氏を法相に復帰させた理由について、東京地検特捜部の政界捜査を牽制する狙いがあるのではとささやかれています」
10年ぶりに現職国会議員を逮捕した「森本特捜」
法曹関係者は、こう打ち明ける。
東京地検特捜部は、7月に津地検の検事正に転出した森本宏前部長の代に、10年ぶりに現職国会議員を逮捕した。2019年12月、秋元司衆院議員を収賄容疑で逮捕したこのIR汚職事件は、旧民主党の代表を務めた小沢一郎衆院議員の秘書だった石川知裕衆院議員(当時)が2010年1月に政治資金規正法違反容疑で逮捕されて以来の政界捜査となった。また、政界汚職となると、2002年の鈴木宗男衆院議員(同)以来、実に17年ぶりとなった。
「森本特捜部はその後も昨年初当選した河井案里参院議員の選挙違反事件で、案里議員と夫の衆院議員・克行元法相を逮捕しています。故田中角栄元首相はロッキード事件で自身が逮捕されて以降、法相ポストに田中派や田中元首相に近い『隠れ田中派』と呼ばれる人物を就任させて、特捜検察ににらみを利かせてきました。河井克行元法相は菅首相の側近とも言われた人物です。側近を逮捕された菅首相が特捜部の政界捜査ににらみを利かせたいと考えても不思議ではないのです」(同前)
菅首相は、2014年に設置した内閣人事局を通じて霞が関を中心とした中央省庁の幹部職員をグリップすることで、官房長官として「安倍一強」時代を構築してきたことから「影の総理」などとも呼ばれた人物だ。しかも森本氏の後任の新河隆志特捜部長も就任早々、森本氏の「置き土産」とでもいうべきIR汚職の証人買収事件で秋元議員を再び逮捕している。菅首相が田中元首相のように、法相人事を通じて法務・検察当局にプレッシャーをかけようという発想を持ったとしても、違和感はないだろう。