「安倍政権の守護神」を出世させ、ライバルを押し退けたのは……
「7月17日に検事総長に就任した林真琴氏は、早くから総長候補と目されていながら、『安倍政権の守護神』などとも呼ばれた黒川弘務元東京高検検事長を安倍政権が重用したことで、一時総長就任に黄信号が灯ったことは一連の賭けマージャン問題で明らかになっていますが、その過程で2018年1月9日に法務省ナンバー2の刑事局長からトップの事務次官ではなく、名古屋高検検事長に転出させられたのが林氏であり、転出を命じたのが当時法相だった上川氏なのです。
刑事局長から法務事務次官を経て、地方の検事長、総長の待機ポストである東京高検検事長、そして検事総長に上り詰めるというのが赤レンガ派と呼ばれるエリート検察官の王道です。黒川氏を重用していた安倍官邸は林氏の次官昇進に、2度にわたり『待った』をかけていましたが、このときばかりは法務・検察側の人事案通りに林氏の次官就任を認める方向でした。しかし、林氏と意見対立のあった上川氏が法相の立場で反対し、名古屋高検検事長への転出が決まったという経緯があるのです」(同前)
法務省刑事局長から名古屋高検検事長は「特進」と言える処遇ではある。ただ、東京地検特捜部を配下に置く東京高検検事長が検事総長の待機ポストであるのに対して、大阪地検特捜部を配下に置く大阪高検検事長と名古屋地検特捜部を配下に置く名古屋高検検事長は「上がりポスト」の側面が強い。
「かつて『特捜のエース』と呼ばれた石川達紘元東京地検特捜部長も名古屋高検検事長を最後に退官しています。林氏を嫌って名古屋に飛ばした上川氏を法相に戻すという人事は、検察庁法で『(法相は)個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる』と規定されている指揮権を持つ上川法相を通じて菅首相が林検事総長をグリップし、政界捜査ににらみを利かせる意図があるというのは、うがち過ぎとは言えないでしょう。菅政権が林検事総長をグリップするには、名古屋高検検事長人事で林氏に『強権を発動』した上川氏が法相として最適任というわけです」(同前)