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雑居ビル買い取りを巡る2人のトラブル

 ここで出てきたのが山岡だった。居酒屋チェーン代表として知られ、この雑居ビルにも出店していた関係で、所有者と話ができる。山岡が融資を受けて雑居ビルを買い取り、本間に転売する話が成立した。

 山岡の買い取り完了後、本間は契約に基づいて山岡に8億円の手付け金を支払った。しかし山岡はそれを流用したため融資金融機関へ返済できず、抵当権を外せなくなった。これでは本間は雑居ビルを依頼主に売ることができず、2人は本間行きつけの銀座のクラブで怒鳴り合っているところを目撃されていた。

 後に明らかになった殺害は計画的で残忍なものだった。

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※山梨県鳴沢村の樹海。写真は記事とは別の事件 ©共同通信社

生きたまま業務用の冷蔵車に放り込み……

 抵当権抹消が不可能になった山岡は、本間の殺害を計画。自身が経営する料亭に呼び出し、本来、本間が上座だが、敢えて廊下が背になる下座に座らせた。山岡は何回か席を立ち、隙を見て後ろから本間の首を絞めて気絶させた。

 すぐに運転手らを呼んでロールスロイスに本間を乗せて江東区の会社の寮へ運び、拉致。2日後の夜、弱っていた本間の手足を縛り、生きたまま業務用の冷蔵車に放り込んで、山岡が所有する山梨県鳴沢村の別荘に運んだ。

 2日後の夜、死体から衣服をはぎ取り、別荘から500メートル離れた山林に埋めた。捜査員たちがその場所を掘り返すと、供述通りに遺体が見つかった(読売新聞88年4月7日)。

 山岡は本間を拉致した翌朝、一旦熊本県へ飛んでいた。アリバイを作るためだったと見られる。そして本間失踪後、山岡は本間企画に対して裏金3億円の約束があったと要求して受け取り、それを充当して抵当権を抹消、取引を成立させて完全犯罪を目論んでいた。

 バブルがまだ続いていた89年3月、東京地裁は山岡に無期懲役の判決を下している。

(敬称略)