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銀行と生保の間で起きていた地上げを巡るトラブル

 失踪した時、本間は西巣鴨で4000坪の敷地に大型複合ビルを建設する計画を描き、デベロッパー(開発会社)への転身を夢見ていた。一方で失踪後、代表がいないにも関わらず本間企画の役員が変更され、会社口座は空っぽになり、抱えていた物件ごと身売りされた。そこに様々な裏事情があるようにも見えた。

 本間の失踪当時から取材したジャーナリストの中西昭彦はこう話す。

「新宿で飲んでいた時に『地上げ屋が失踪した』と聞いて、取材を始めると、銀行と生保が巨額の金を注ぎ込み、様々な場所で地上げを行って、トラブルが起きていたことが分かりました。

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 とくに、老朽化した品川区の大規模マンションの地上げは争奪戦がすさまじかった。この地上げで本間と組んでいた生保系不動産会社の社長は、本間が失踪した後、ゲッソリと痩せて人が変わったようになった。警視庁はこの社長を疑いましたが、決め手が無く、失踪から8カ月、9カ月過ぎても真相は分かりませんでした」

※山梨県鳴沢村の樹海 ©共同通信社

本間と料亭で会食していた人物の正体

 失踪から1年2カ月後――警視庁は、居酒屋チェーンを経営する山岡伸介(42歳、仮名)、運転手(28歳)、部下(30歳)の3人を殺人と死体遺棄容疑で逮捕した。

 山岡は熊本県の高校を卒業後、飲食店のボーイになり、そこから年商30億円の居酒屋チェーンを築いた人物だった。山岡もまた銀座などで地上げを始めたが、うまく行かず、資金繰りに窮していたという。

 本間と料亭で会食していたのが山岡だった。

 2人は地上げを巡ってトラブルになっていた。銀行系ノンバンクが本社を建てるために、東京駅八重洲口から近くの一角で地上げが開始された。本間も参戦し、1件は地上げを完了したが、もう1件、約20坪の土地に建つ雑居ビルの買収が進まなかった。売却を了承した所有者が一転し、「名前も聞いたことのない会社には売らない」と言い出したのだ。