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主演として役をまっとうする三浦さんの覚悟が見えた瞬間

――五代友厚が持ち歩いている藍染めの工具入れも三浦さんが自ら用意したそうですね。

田中 五代友厚が製藍事業に力を入れていたのを調べていて、工具入れには藍染めのものを使いたいって提案してくれたんです。「監督、藍染めを出したいのですが」と僕に訊ねてきたので、「五代は藍染めの事業を大切にしていたから、いいかもね」と答えたんです。

 そうしたら、五代とゆかりのある藍染めのアーティストの方と打ち合わせをしてハンカチをいくつか用意して、「これだと血が付いてしまうシーンでは目立たないですかね」とか「これだと入れる工具が映えますね」とか、画のこともきちんと考えたうえで僕にプレゼンテーションしてくれるんですよ。これは本当にありがたかったし、想いが伝わるというか。彼は主演として自分の役をまっとうしようとしているんだなと、その覚悟みたいなものが節々に見えましたね。

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――三浦さんは以前から殺陣を本格的に習っていたそうですが、今回の作品でその凄まじい腕前を存分に披露していました。

田中 最初に会った時に「プライベートで殺陣師さんに習っています」と話してくれたけど、「どこまでできるんだろうね」と助監督たちと話をしていたんですよ。それで練習に来てもらって、殺陣師の中村健人さんと動き出したのを目の当たりにして、こんなに殺陣ができる役者だったのかと本当にびっくりしました。あれほどの動きもできるうえに、所作も完璧で、筋肉もちゃんと付いている。つまり、ちゃんと刀が振れるような体に出来上がっているというのは日頃の鍛錬があってのもの。反射神経とか運動神経の良さみたいな部分はもちろんですけど、センスの良さも抜群なんですよ。立ち回りをする際も「ここ、こうしたほうがいいんじゃないですかね」と必ずアイデアを出してくれる。

「武士だから刀を傷つけたくない」という想い

――具体的にはどういったものでしたか。

田中 そのアイデアの根底には、刀を粗末にしたくないという想いがあるんです。それは「武士だから刀を傷つけたくない」ということなんですよね。僕も「確かに」と納得して、刀を抜かずとも鞘で叩くという立ち回りも考えていたけど、それだと刀が傷ついてしまうこともあるわけだからすべてやめました。そういうふうに春馬君と一緒に殺陣を作り上げたところがあります。たいしたものですよ、撮影中も練習を欠かしませんでしたから。殺陣の練習をしているところをビデオに撮って、それを持ち帰って家でも練習して。うまくなったら、それをビデオに撮ってチェックしながらさらに練習する。空いている日があれば、家より広いからと撮影所にやってきては練習していました。

 

――全編にわたってセリフは薩摩弁でしたが、三浦さんは習得していたのでしょうか?

田中 方言指導もつとめた田上晃吉(劇中では舟木役)さんと朝から晩まで一緒にいて、彼と薩摩弁で話をしているんですよ。日常会話が薩摩弁のイントネーションになるぐらいに自分のものにしていたと思います。