栄養たっぷりのにんじん。でも、もしかしたら子どもだけではなく、大人にとっても苦手な食材ナンバーワンかも知れませんね。そんなにんじんを美味しく食べられて、しかも驚くほど簡単に作れる特別な一皿を考えました。

 じつは私は野菜を買ってきたら、いつも1袋全部、丸ごと煮たり蒸したりしています。なぜなら、季節の野菜を美味しく食べる究極の調理法こそが「丸ごと料理」だからです。

 にんじんだったら、水とお酒で蒸し煮にして、最後に調味。そのまま冷ませば、調味料と一緒に、溶け出たうまみも素材にしみ込み、おいしさがアップします。

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 テーブルに丸ごと運べば「おおっ!」と歓声があがります。見た目のインパクトはもちろんのこと、丸ごと調理することで、野菜の味を最大限に引き出せるのです。

 とはいえ、火にかける時間はそれほど長くありません。ただし、火を止めてから放っておくことがポイントです。時間をかけていますが、手間はかけていません。余熱でじんわり自らの味を育ませるのです。

 え、こんなに簡単でいいの、と思われるかも知れません。じつは、最近の食材は、どんどん美味しくなってきてます。スーパーで売られている普通のにんじんも、昔に比べると甘みが増している気がしませんか。素材の味を生かすシンプルな料理は、現代人にいちばん合っていると感じています。

水分を少なめにし、蓋をして弱火で煮込めば、素材がもともと持っている水分も加わり、旨味を逃さず美味しく仕上がります。©鍋島徳恭

にんじんの丸ごと蒸し煮

材料(作りやすい分量)

にんじん…中5〜6本
酒…1/2カップ
水…1+1/2カップ
花椒(ホアジャオ)…15粒
粗塩…小さじ1/4
たれ
 からし…大さじ1/2
 ごま油…大さじ1
こしょう…少々

作り方

1 にんじんのへたを除き、皮をむく。
2 鍋に1のにんじん、酒、水、花椒を入れて中火にかけ、煮立ったら弱火にして蓋をし、30分蒸し煮にする。最後に粗塩を加える。
3 たれの材料を合わせる。2のにんじんを器に盛り、たれをかけ、こしょうをかける。

にんじんを器に盛るときに、包丁の刃などで押しつぶすと、たれの味がしみやすく、食べやすい。©鍋島徳恭