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 一方、「不活化ワクチン」や「組み換えたんぱくワクチン」は、これまでも数多くのヒトに接種した実績があり、安全性に関しても知見が蓄積されています。たとえば、乳幼児に接種される「四種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)ワクチン」や「日本脳炎ワクチン」、毎年打つ人の多い「インフルエンザワクチン」は不活化ワクチンです。

 これらは蓄積されたデータから、どんなヒトにどのような副反応が出るか予見しやすく、対応もしやすい利点があります。実は、国立感染症研究所や国内ワクチンメーカーのグループは安全性を重視して、不活化や組み換えたんぱくなど従来のタイプのワクチン開発に取り組んでいます。まだ大規模な臨床試験を実施するに至っておらず、本格的に接種できるのは来年後半か再来年以降になると思われますが、今後、こうした実績のある従来タイプが登場する可能性もあることは、知っておいたほうがいいでしょう。

手洗いなど基本の予防策が重要 ※写真はイメージ ©iStock.com

(2)有効性95%は「100人中95人防げる」という意味ではない!

 ファイザー&ビオンテックのワクチンは、中間結果で2回接種後の有効性が95%に達したと報告されました。またモデルナのワクチンも2回接種後で95%近い有効性が報告されています。国内のワクチン研究者に聞いても「予想以上の高い成績」とのことで、非常に期待が持てる結果だと言えるでしょう。

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 ただ、ワクチンの有効性に関してはよく誤解されるのですが、これは「100人打てば95人はコロナを防げる」という意味ではありません。ファイザー&ビオンテックの場合、米国、ドイツ、トルコ、南アフリカ、ブラジル、アルゼンチンで行われた臨床試験(第Ⅲ相試験)に、全部で43448人が参加しています。この人たちの約半数をプラセボ(ニセモノ)を打つグループ、約半数を本物のワクチンを打つグループに分けて、試験は実施されました。

©iStock.com

 その結果、接種時にコロナ感染歴のなかった36523人のうち、コロナに感染した人がプラセボを打った人では162人(重症者9人)だったのに対し、本物を打った人では8人(重症者1人)に減ったというのが95%の意味です。つまり、解析対象となった人の大半(36353人)は、本物のワクチンを打ったか打たなかったかにかかわらず、試験期間中にコロナにかかっていないのです(感染率は解析対象者の約0.47%に過ぎません)。

試験開始から3ヵ月ほどの中間結果

 しかも、これは試験開始から3ヵ月ほどでの中間結果です。このワクチンの長期的な安全性と有効性を検証するために、被験者はさらに2年間追跡調査されることになっています。その間に、被験者の中でコロナに感染する人がさらに出てくる可能性もあります。もしかするとワクチンによって高められた抗体の力が落ちるなどして、ワクチンを打った人の中でもコロナ感染者や重症者が増え、プラセボグループとの差が縮まることもありえるのです(もちろん、逆に差が広がる可能性もあります)。

 もちろん、ワクチンの効果が持続することを期待しますが、肝心なのは長期的に結果を見ていく必要があるということです。「95%」という高い数字はあくまで暫定的なものとして、冷静に推移を見守る必要があるでしょう。