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(3)ワクチンを打つ方が重症化することもありえる

 ファイザー&ビオンテックのワクチンに関して、第Ⅲ相試験の中間結果で報告されている重度の副反応は「疲労(3.8%)」と「頭痛(2.0%)」のみでした。今のところ、冒頭に書いた強いアレルギー反応以外に、命に関わったり後遺症が残ったりするような重大な副反応は、報告されていません。

 とはいえ、慎重に見ていかなくてはいけないのも確かです。第一に注意すべきなのが、臨床試験では検出されなかった副反応が明らかになる可能性です。試験では約2万人にしかワクチンを打っていません。もし重篤な副反応があったとしても、それが10万人に1人に起こるものだったとすると、2万人の試験の段階では感知できない可能性があるのです。

※写真はイメージ ©iStock.com

 これから欧米では、何百万、何千万、将来的には何億という人がこのワクチンを打つかもしれません。すると、10万人に1人しか起らない稀な副反応だったとしても、100万人に打てば10人、1000万人に打てば100人、1億人に打てば1000人が被害を受けることになります。実際、これまでも臨床試験の段階で安全だと思われていた薬が、多くの人に実際に使われたとたんに、副作用で大問題になったというケースがいくつもありました。

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通常は5~10年かかるプロセスを1年足らずで

 もう一つ知っておくべきなのは長期的な安全性についてです。中間報告の段階では95%の有効性で、重症化した人もプラセボ9人に対してワクチン1人と、非常に期待の持てる結果でした。しかし、長期的に見て解析してみると、実はワクチンを打った人のほうが重症化する人が多かったという結果にならないとも限りません。

 実際にワクチンやウイルスの専門家の間でもっとも心配されているのが、ワクチンを打ったことでかえって感染がしやすくなったり、症状が悪化したりする現象です。過去にも小児のRSウイルスワクチンやデング熱のワクチンで、この現象が報告されています。つまり、短期的には安全性に問題がないように思えても、長期的に見てみるとワクチンを打ったほうが感染率や重症化率が高かったということも起こりえるのです。

©iStock.com

 ワクチン開発には安全性や有効性を見極めるために通常は5~10年かかるとされています。にもかかわらず、新型コロナのワクチンは緊急性が高かったこともあって、たった1年たらずで開発され、本格接種が始まりました。強調しておきますが、私はワクチンが失敗すればいいとか、打たないほうがいいと思っているわけではありません。

 しかし、新型コロナのワクチンについては、まだまだわからないことが多いのです。安心してワクチンを打つには、欧米での接種のデータなども見ながら、どのような問題点やクリアすべき課題があるのかを知ることが欠かせません。そのためにも、国内でのワクチン接種にどう臨んでいくか、一人一人が判断できる情報を政府・厚労省は包み隠さず、周知する努力をすべきだと考えます。