会社の飲み会の二次会で、いかがわしい場所に連れて行かれるのはセクハラ(セクシャル・ハラスメント)なのか。新型コロナウイルスがなければ気の向くものから気の向かないものまで宴席が続いていたであろう12月、ひとりのサラリーマンが会社や上司に反旗を翻し、裁判所に訴え出た。ゲイバーで様々な嫌がらせを受けたという男性だが、果たして主張は認められるのか。
性器をもてあそばれ…女性上司は止めるどころか大笑い
NTTドコモの会社員だった男性(36)が、よもやの宴席に参加したのは入社して間もない2014年の師走のこと。楽曲制作などを手がけてきた経験を買われての採用。だが、飲み会に連れて行ってくれた40代の女性上司に求められたのは音楽とは全く無縁の「スキル」だった。
男性が二次会で女性上司に連れて行かれたのは、ゲイバー。男性はゲイバーのゲイとみられる男性店長に顔をなめ回されただけでなく、下着の中に手を入れられて下半身をもてあそばれた。かたわらにいた別の同僚の男性も下着をまくられ、性器を店長に触られた。
同意もなしに性器をもてあそぶのは、下手すれば強制性交などにもつながりかねない行為。だが、女性上司は止めるどころか大笑いしながらその様子を眺めていたという。
ほかにも、男性は40代の男性上司に副業を手伝わされたとして、パワハラ被害も受けたと主張。2018年には社内のコンプライアンス担当部署に訴えたが、同年9月に音楽とは全く無縁の食品担当に異動させられ、適応障害などを発症。2019年6月に退職した。
男性は今年12月、女性上司がゲイバーでの行為を止めなかったのはセクハラ、男性上司が副業を手伝わせたのはパワハラだとして、上司やNTTドコモに計約460万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。会見も開き、メディアに広く被害を訴えた。
セクハラ、パワハラに厳しい昨今、主張は認められてもおかしくなさそうだが、判例や専門家の見解からは、さまざまなハードルが浮かび上がる。