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異常に重い「医療費」負担を増やさないための3つの知恵

税収の7割以上にも相当! 巨費を医療につぎ込む「病気国家」日本

2017/09/26

その2 できるだけ薬に頼らないようにする

「インフルエンザかも」と思ったら、すぐに医療機関に行って薬をもらうという人が多いのではないでしょうか。しかし、重症化した人、体の弱い乳幼児や高齢者、妊婦、ぜん息、糖尿病、心肺疾患、免疫力が落ちる病気などのある人は別ですが、インフルエンザだったとしても、ふだん健康な人なら十分に水分を摂って安静にしていれば、大抵は1週間ほどで熱が下がって治ることがほとんどです。もし早く医療機関に行って抗インフルエンザ薬を使ったとしても、せいぜい1日か半日ほど早く熱が下がるかもしれない程度の効果しかありません。

 そもそも、海外ではふだん健康な人に抗インフルエンザ薬を処方することは、ほとんどないそうです。インフルエンザにこれほど薬を消費しているのは、日本ぐらいだと言われています。ふつうの風邪も同様で、よく「念のため」に抗生物質が処方されますが、細菌ではなくウイルスで起こる風邪やインフルエンザなどの病気に抗生物質は効きません。二次的に肺炎など細菌感染を起こすリスクがある人は別ですが、そもそも抗生物質は乱用すべき薬ではないのです(「『風邪に抗生物質投与は控えて』厚労省が手引書」日本経済新聞2017年3月6日)。

海外ではふだん健康な人に抗インフルエンザ薬を処方することはほとんどない ©iStock.com

6種類以上の薬を飲むと害の方が大きくなる

 様々な病気や症状を抱える高齢者では、高血圧薬、糖尿病薬、コレステロール薬、抗不整脈薬、抗血栓薬、鎮痛薬、睡眠薬などなど、たくさんの種類の薬を飲んでいる人がたくさんいます。しかし、日本老年医学会は、薬をたくさん飲まないよう警鐘を鳴らしています。なぜなら、6種類以上になると明らかに副作用の頻度が増え、薬による害のほうが大きくなることが多いからです(「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用」)。

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 ですから、全部飲むのが大変なほど薬を出されている人や、たくさん薬を飲んでいるのに体調がすぐれない人は、薬を必要最小限に減らせないか主治医に相談してみてください。高齢者を多く診ている医師によると、それまで元気のなかった人が薬を減らしたとたんに食欲が出たり、一人でトイレに行けるようになったりするのもよくあることだと言います。

 高齢者では複数の病院や診療科にかかっており、そのたびに薬を出されて増えてしまうという人も多いはずです。その場合は、薬をもらうかかりつけの調剤薬局を1カ所に決めて「お薬手帳」をつくってもらい、なじみの薬剤師さんに処方内容をチェックしてもらってください。

 それで薬の量などに問題がある場合には、薬剤師さんから各医療機関や医師に伝えてもらうようにすればいいと思います。薬剤師さんには、薬の処方の仕方や量などに問題がある場合には、医師に確認をする「疑義照会」という役割があります。無駄な薬を飲まないためにも、薬剤師さんを味方につけることは、とても大切なことなのです。

その3 すぐに検査をして薬をたくさん出す医師にはかからない

「病院に行ったのだから検査を受けて、薬をもらわないと損」と思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。しかし、「検査をして、薬を出す」のが、医師の仕事ではありません。目の前の患者さんを診察して、検査や治療が必要かどうかを判断するのが、医師の第一の役目のはずなのです。

 ですから、もし「検査も薬も不必要」と診断して、無駄な医療を回避したとしたら、その医師は的確な判断をしたことになります。つまり、無駄な検査をせず、無駄な薬を出さない医師ほど「名医」と言えるはずなのです。

医療訴訟を恐れて「念のため」に検査や治療をする医師が増加

 しかし、近年、患者のクレームや医療訴訟を恐れるあまり、「念のため」の検査や治療をする医師が増えたと言われています。その念のためが医療費を膨張させるとともに、過剰な検査や投薬によって患者を不健康にしています。ですから、患者側も医療に頼り過ぎることが自分たちを苦しめていることに、早く気づく必要があると思います。

 無駄な医療を回避して、適切な医療を受けるためには、なんでも相談できる身近なかかりつけ医を見つけることが欠かせません。その際、検査をすぐにして薬をたくさん出してくれる医師ではなく、とにかくよく話を聞いてくれて、なぜ検査や薬が不必要なのか(あるいは必要なのか)を、しっかり説明してくれる医師を選ぶことが大切だと思います。

 そのような医師はまだまだ少なくて、なかなか見つからないかもしれません。しかし、患者側の意識が変われば、それに応じて医療者側の意識も変わってくるはずです。いずれにせよ、このままでは現行の医療保険制度自体が、破綻してしまうかもしれません。だれもが安心してかかることのできる医療を維持するためにも、私たちはそのあり方を真剣に考え、変えていく必要があるのです。

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