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“現場”の密やかな努力が常に私の小説のテーマ
――本作では舞台となった杵築の街並み、また人々の暮らしが鮮やかに立ち上がってきます。コロナ禍でしたが、取材は苦労されたのではないですか。
昨年の晩秋の取材に続き、本当は今年の3月にも杵築市にお邪魔したかったのですが、コロナウイルスの蔓延によって断念せざるを得ませんでした。しかし、観光協会の方が街並みや方言を含め熱心に協力してくださって、そのやりとりはメールや電話で数十回にも及びました。杵築の方のご支援なくしてこの小説は書き上げられませんでした。
――コロナの話題が出ましたが、「日本の危機管理」をテーマに書かれてきた麻生さんが、現在の状況で気になることはあるでしょうか。
行政には「なんとかなるんじゃないのか?」という空気が蔓延していて、その皺寄せが医療従事者に向かっている。国の政策というよりは民間人の、現場の努力で埋め合わせている事例が至るところにある。そういった、決して表に出ることはない“現場”の密やかな努力が常に私の小説のテーマにもなっています。
――“日本警察史上最大の作戦”には、ある国際的なイベントが絡みます。直近に控える国際的イベントといえば来年開催予定の東京オリンピックですが、「危機管理」という観点からは、オリンピックをどう見ますか?