偶然、いろんなことを予言する映画に
そんな時代の寵児として登場するのがマックス・ロード(ペドロ・パスカル)という石油投資のビジネスマンだ。テレビで言葉巧みにリッチになる秘訣を語るマックスだが、実際の経営は火の車。彼を見ていると、80年代に不動産王として一世を風靡したドナルド・トランプを思い出さずにいられない。しかもマックス・ロードは国を隔てる巨大な壁を築く。トランプがメキシコとの国境に壁を築けと言ったように。
「コミックにおけるマックス・ロードというキャラクターには現実の様々なモデルが反映されています。だから私もヘッジファンド詐欺のバーニー・マードフなどを混ぜ込んでマックスのキャラクターを作りました。特定の政治的立場を取らないよう注意したんです。ワンダーウーマンはすべての人々のヒーローですから。
マックス・ロードが壁を築くシーンを脚本に書いたのは、彼(トランプ)が壁のことを言う前です。彼に限らずこの『ワンダーウーマン1984』は偶然、いろんなことを予言する映画になりました。首都ワシントンでの暴動も撮影した後、現実になってしまいましたし」
チーターというキャラクターの本質
ダイアナに立ち向かう敵はもうひとり、チーター(クリステン・ウィグ)。ある理由でワンダーウーマン以上のパワーを身につけたスーパーヴィランだ。
「原作コミックにはいろんなバージョンのチーターがあります。そのなかで好きなのはダイアナの友人だった、という話です。私は全部のチーターを読んで、チーターというキャラクターの本質を考えました。何が彼女の本質なのか」
ジェンキンス描くチーターは、男尊女卑の社会で押さえつけられてきた女性がついに爆発し、男たちに牙を剥くモンスターになる。それはジェンキンス監督が2003年に作った初の長編『モンスター』とつながる。『モンスター』は貧しく虐待されて育ったアイリーン・ウォーノスという実在のホームレス女性が行きずりの男7人を殺すモンスターになるまでの物語だ。
マックス・ロードやチーターの願いは、古代の遺物の禁断の力によってかなえられ、世界を混乱に陥れる。しかし、ダイアナにも秘めたる思いがあった。