2017年、次々にメガヒットして巨大なエンターテインメント帝国となったマーヴェル・コミックスの映画化作品群に対して、ライバルのDCコミックスの映画化は、バットマンとスーパーマンの2トップを抱えながら興行的に低迷していた。
それを打開する突破口になったのが、パティ・ジェンキンス監督の『ワンダーウーマン』だった。スーパーヒーロー映画には珍しく観客の半分近くが女性で、女性監督の映画として史上最高の興行収入を記録した。
「ずっとワンダーウーマンのファンでした」
「私はずっとワンダーウーマンのファンでした」ジェンキンスは語る。「いつか人々を感動させるものが作りたいとずっと夢見てきました。だから自分がこうしていることが魔法のように思われます」
『ワンダーウーマン』は「プリンセスもの」のおとぎ話として始まる。超能力を持った女戦士だけが暮らす島で育った王女ダイアナ(ガル・ガドット)が、生まれて初めて見た男性スティーブ(クリス・パイン)に恋をして、島を出る。しかし、外の世界では第一次世界大戦が勃発していた。
「戦争の機械化で大量殺戮の時代が始まったのです。そのなかでダイアナは人類の現実に直面します」
戦争を通して人の醜さ愚かさを知り、しかしスティーブを愛して、人を愛する幸福を知り、彼を失って、愛を失う悲しみを知る。そして『ローマの休日』のアンワンダーウーマンとしての使命に目覚める。
今回、公開される続編『ワンダーウーマン1984』は、それから66年後の物語。
1980年代を舞台に選んだ理由
「80年代、私は少女時代を過ごし、テレビ版『ワンダーウーマン』を観てファンになりました」ジェンキンスは言う。
「私が1980年代を舞台に選んだのは、それがある意味、西欧文明の頂点だからです。物質的な栄華と成功を極め、その代償を払うことになる前です。そんな現代社会でワンダーウーマンは何ができるのか? ダイアナはそれをどう感じるのか?」
80年代はバブルの時代だった。レーガン政権の金融規制撤廃で、株式市場はゴールドラッシュになった。濡れ手に粟の大金をつかんだ者たちは高級なスーツを着て、高級な車に乗り、高級なレストランで高級なシャンパンを飲んだ。