ミッキー・カンター氏(81)は民主党政権のビル・クリントン大統領時代、1993年から97年に米通商代表部(USTR)代表を務め、96年から97年の間は商務長官も兼務。タフ・ネゴシエイターとして日本の政財界に恐れられた。
有名なのは、95年の日米自動車交渉の記念写真撮影の際、橋本龍太郎通産大臣(当時)に竹刀をプレゼントし、橋本氏の喉元に竹刀を突きつけたシーンである。
一方で、彼は日本好きでも知られる。
同氏の教え子らは、バイデン政権の政府高官などに就く予定である。はたしてバイデン政権の対中政策はどうなるのか?
81歳、いまだ現役
カンター氏とは、筆者が三井物産ワシントンDC事務所長時代(2008年~2012年)に仕事上のご縁を頂いた。筆者が日本に戻って三井物産を卒業し、カンター氏とは当然ながら対話する理由もチャンスも無くなった。ただ、彼を含め、ワシントン時代に世話になったアメリカ人にノスタルジーを込めて、「ジャパンダイジェスト」という、日本の新聞情報の中でもアメリカ人に知らせておきたいネタを隔週でメルマガ的に送っている。
受け手である日本通論者のアメリカ人は、それぞれ独自に日本情報を得るチャネルは持っており、ましてや筆者の下手な英語で訳された日本の新聞情報等に目を向ける人は少なく、毎回300人以上に配信する中で、感想なりコメントを送ってくるアメリカ人はごくわずかである。
ところが、カンター氏だけは必ず返事を送ってくる。自身の興味のないテーマの時であっても、少なくとも“Thank you. Take care.”は送ってくる。関心のあるテーマであれば、懸念の表明や、支持、激励のコメントがくる。81歳の高齢なので、時間を持て余して付き合ってくれているのではと思っていたが、実はいまだにハードワーカーだ。多忙さが窺えるのは、返信が極端に早く、しかも文面が全て小文字であることだ。おそらく大文字変換している時間も無駄だと考えているのだろう。
1990年代の日米貿易摩擦では日本の敵役になっていた彼だが、実は今でも相当に日本に関心がある、というか日本が好きである。
今回の「バイデン政権の対中政策」に関するインタビュー要請にも二つ返事で応じて頂いた。
アメリカはTPPに復帰すべし
カンター氏の考えで一貫していたのは、アメリカのリーダーシップのあるべき姿において、アメリカ単独でなく、価値観を共有する国々と共にルールを作る、ということである。
この点において、カンター氏は、まずオバマ政権時代のTPPのハイスタンダードを非常に評価している。そして、トランプ大統領が就任早々TPPからの脱退を決めたことを非常に残念に考えているとして、こう指摘した。