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各部位がめでたい動物ばかりでできていたら

「ぬえ」は、さまざまな動物の部位が混ざっていて、なんだか怖い。では各部位が、めでたい動物ばかりでできていたらどうだろう? たとえば、ひとつの個体に十二支がすべて同居していたりしたら?

 そんな発想から創造をした人は実際にいて、江戸時代の何人かの浮世絵師が作例を残している。

 十二支が詰まった生きものなんて、きっと「キモかわいい」ならぬ「キモめでたい」に違いない。これをぜひ現代に甦らせようと、創作に挑んだアーティストがいる。

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 日頃から神獣などをテーマに作品を制作してきたfeebee(フィービー)だ。

新年にふさわしく晴れやかなfeebeeの「ぬえ」

 イラストレーターの経歴も持つfeebeeの持ち味は、力強い線の表現とビビッドな色彩感覚。自分の特質を活かすべく、アダチ版画研究所と手を組んだのだった。

 卓越の彫師、摺師を揃えて、伝統木版画を制作しているのがアダチ版画研究所である。feebeeの描いた原画をもとにして、昨年は『寿という獣 子』を、そしてこのたび『寿という獣 丑』という新作浮世絵を完成させた。

『寿という獣 丑』を見れば、なるほどベースは2021年の干支である牛の姿だとすぐわかる。同時に尻尾が蛇だったり、前脚は蹄鉄をつけた馬のものだったりと、十二支がすべて一頭の中に埋め込まれているのにも気づく。

木版画『寿という獣 丑』2020年

  これが実際に生きて動いていたら、そりゃこの上なく気味悪いだろうけれど、絵柄としては新年を迎えるに当たってまことふさわしく晴れやかだ。

木版画『寿という獣 子』2019年

 版画作品『寿という獣』シリーズはアダチ版画にて購入が可能。feebeeは現在、六本木ヒルズA/Dギャラリーで個展「変化しつつ循環するもの」(1月3日まで)も開催中である。