1月27日に発売される『タイニーストーリーズ』(文藝春秋)の刊行を記念して、山田詠美さん(原作)と内田春菊さん(作画)の対談をお届けします。小説と漫画、両方の執筆経験があるお二人が『タイニーストーリーズ』の着想や物語、キャラクターについて縦横無尽に語ります。
内田春菊さん「鬼滅は可愛らしい作品だと思います」
――最近、漫画のパワーがすごいですよね。コロナ禍もあって、特に『鬼滅の刃』の勢いが。
山田 じつは観たことも読んだこともないのだけど、面白いの?
内田 子供たちが横でアニメを観ているので……漫画も家に何冊かあります。すごく可愛らしい作品です。戦うところはよく知らないけれど、日常の端々のキャラクターの描き方がとても良い。主人公(炭治郎)が背負っているものから、鬼になった妹がコロンと出てくるシーンがあって。鬼にされちゃってるので、他の人を噛まないように、竹をくわえてるんですよ。
山田 どこかフェティシズムを感じるね。
内田 それなのに、コロッと妹が出てきたら、もう一人の男の子(善逸)が「こんなに可愛い女の子を隠してたのか!」とか言うんです。そんなほんわかした流れで戦うシーンまで行くのかと思うと、愛らしい作品だな、と思いました。
山田 タイミングを逃してしまった作品は結構ありますね。『ガラスの仮面』も読み逃してしまって、もう今さら読めないな……と。「おそろしい子……!」ってセリフは知ってるのだけど。長い作品に出遅れると、もう乗れなくなってしまうよね。でも、美内すずえ先生は昔の作品が大好きです。
内田 分量がありますからね。どのあたりまで手に入れるのか……でも、今は電子で気軽に読めるから。
山田 ああ、そうか。長編作品を読んだのは、吉田秋生先生の『BANANA FISH』が最後かな。あと、一時夫婦揃って『島耕作』のブームが来て、全部読みました。あれはSFだよね(笑)。
内田 SFなんですか? 最後まで全部読んだのは『シグルイ』が最後ですね。BLみたいな展開もあって、絡み合う代わりに斬りつけ合っている感じなんです。完結した時は「もう何も読むものがない!」ってなりました。