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「スクールロイヤー制度で、いじめはなくなりますか?」 弁護士が考える“いじめと法律”

2021/01/07

genre : ライフ, 社会, 教育

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 他方、担い手の側の視点で言えば、スクールロイヤーが得るべき知識は、今まで暗黙知となっていた部分も多いので、知識やその獲得の仕方を明確化する必要があります。

 このように、何をやれば子どもの権利が実現できるのか、そのためにはどういう知識が必要で、どういうアドバイスをしなければいけないのかということを、第三者の視点できちんと明確化し、浸透させていくことで、何をスクールロイヤーに相談できるのか、という点も明確になっていくという効果もあると思います。このように、弁護士及び学校における双方の取り組みが、今後スクールロイヤー制度を広げていくためには重要だと思っています。

©️iStock.com

スクールロイヤーの制度を広げる活動と「教育判例勉強会」

──スクールロイヤーの制度を広げる活動にも注力しておられるとお聞きしました。

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鬼澤 はい。いまは現場経験のある私たちが中心となって、スクールロイヤー への現場へのアドバイスの在り方を明文化・体系化して発信しています。これが整ったら、次はほかの関係機関との連携を増やすことを考えています。

 文部科学省では、学校や教育委員会が弁護士に相談するための制度構築のマニュアルや、具体的な相談の事例集も作成しました(教育行政に係る法務相談体制構築に向けた手引き)。これは、スクールロイヤーという名称であるか否かに関わらず、学校現場や、学校に関わる弁護士にも参考になる手引き書になっています。

 個人的に現場の教員たちと一緒にやっている「教育判例勉強会」も、非常に充実した内容です。これまでの判例集だけでは、教員と弁護士がそれぞれ学び合う、ということをどう実現すれば良いのかがなかなか分かりません。そこで、実際に勉強会で検討したものを、来年あたり書籍としてまとめる予定で進めています。具体的な裁判例や第三者委員会の報告書をあげながら、現場の先生たちの意見と裁判所の判断を紹介するという、事例と対話集になっています。

 現場の先生方はもちろん、弁護士の方々も研修で利用したり、勉強会等でも活用していただきたいです。