──聞いているだけでめまいがします。なぜそんな大変なお仕事に関わろうと思われたのですか。
鬼澤 大学4年生の時に、事業で社会課題の解決を目指す社会起業家を支援するSVP東京という団体でインターンをし、また、法科大学院時代に特定非営利活動法人Teach For Japanの存在を知ったのがきっかけです。もともと教育に関わりたいと思っていたわけではなかったのですが、「教室から世界を変える」を理念に掲げ、教育環境の格差解消に取り組む人たちの活動を間近に見て教育分野に強い関心を持つようになりました。その後、司法修習中に教員の人たちとの勉強会等も開催していくうちに、「子どもを支える人たちの支えになりたい」と思うようになりました。
子どもを支える人にも「支え」が必要
──「子どもを支える人たちの支え」ですか。教育現場に関わる弁護士は、一般にイメージする弁護士とはだいぶ違うのでしょうか。
鬼澤 教育現場は、白黒つけられない部分が多いんです。たとえば、わが子への対応に不満を感じている保護者に「民法第●条の第●にこう書かれているので却下します」と言い切ったら、保護者は心を閉ざしてしまいますよね。
「法律上はこうだけれど、お子さんと相手のお子さんの最善のために、こういう方法はどうでしょうか」と提案できる知識と経験力が求められるのは、難しいところだと思います。
実際に講演会でも、「これって裁判上証拠として扱われますか」という類の相談をよく受けるんですが、弁護士に対して「白黒ハッキリつける怖い人」みたいなイメージを持っている方はまだ多いと思います。もっと日常的に現場の先生方とディスカッションを重ね、「こんなことも相談していいんだ」と、信頼してもらえる存在になることが、まずは目標としているところです。
「スクールロイヤーを導入すれば解決」というわけではない
──2021年度からはスクールロイヤーが全都道府県の教育委員会などに配置されることになっていますが、まだそれほど認知率が高まっていないように感じます。スクールロイヤーの課題はどこにあると思われますか。
鬼澤 スクールロイヤーは、導入したからそれでいいというわけにはいきません。現場の先生方がうまく活用できるような態勢を維持するとともに、どのようなことを相談できるのか認知を広げていかなければいけないと思います。