コロナ禍でもいじめは止まらない。
さいたま市のある中学校では、給食中にせきをしたことからいじめに発展し、大きな問題となった。
いじめはなぜなくならないのだろうか。
2021年度から全都道府県で配置されることが決まった「スクールロイヤー」。いじめをはじめ、さまざまな学校問題解決を手助けする専門家として期待が高まっている。スクールロイヤーの第一人者として江東区を中心にメディアなどでも活躍する鬼澤秀昌弁護士に話を聞いた。(全2回の1回目/続き読む)
(取材・構成:相澤洋美)
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「いじめ」現在の定義のポイントは
「いじめ」の定義(文部科学省)
「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」
――いじめの定義は、時代背景や社会にあわせて改訂されています。現在の定義のポイントを教えてください。
鬼澤 この定義のポイントは、過去のいじめの定義と比較すると分かりやすいと思います。例えば、1986年度から1993年度まで使われていたのは「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認し ているもの。」という定義でした。それが2013年の「いじめ防止対策推進法(以下、「推進法」)の施行に伴い、「一方的に」「継続的に」「深刻な」といった文言が消えるとともに、「攻撃」が「行為」という言葉となり行った側の主観も関係なくなっているのです。また、学校が認識しているかどうかの基準もなくなっています。
された方が苦痛を感じたら「いじめ」
実際いじめは悪ふざけや喧嘩との区別がつきにくく、以前の定義では、深刻ないじめが背景にあっても「お互いにじゃれていた」「一時的な行為である」「いじめというほどひどい行為ではない」などと片付けられてしまうこともありました。法律によって被害を受けた人が苦痛を感じたすべてを「いじめである」と定義づけたのは、そのような理由でいじめを見逃してしまうことを回避するためなのです。
この推進法成立のきっかけとなったのは、2012年の「大津市中2いじめ自殺事件」でした。いじめと自殺の因果関係を認めなかった学校と教育委員会の対応はメディアでも大きく取り上げられ、社会問題となりました。