最初のボタンの掛け違いが拡大しているケースが多い
──学校側と保護者側の主張が食い違う場合は、どう折り合いをつけるのですか。
鬼澤 先ほどのマンガの事例では、主人公のタケくんが同じクラスのSくんを掃除用具入れに閉じ込めたことが「いじめ」と判断されました。ここで学校側が「調査した結果、遊んでいたことは認められましたが、閉じ込めたことに関しては認められませんでした」と答えたとしたら、どうなると思いますか?
保護者:「ウチの子が嘘ついているって言うんですか。ちゃんと調べていないんじゃないですか」
学校:「再度調査しましたが、閉じ込めの事実は認められませんでした」
保護者:「調べていないか、隠蔽しているに違いない! こんな学校、ウチの子は通わせられない」
と悪循環になるのが想像できますよね。
そこでスクールロイヤーは
1)どうやって調査をしたのか。誰から話を聞いたのか。
2)その調査は適切だったか。
3)保護者への伝え方は適切だったか。
をヒアリングして論点を整理し、調査が不十分であることが分かればさらに追加調査を、学校の対応や保護者への伝え方で不適切な点があれば保護者へお詫びするよう、アドバイスをします。
学校と保護者がもめているケースというのは、最初のボタンの掛け違いが拡大しているケースが一般的です。まずそこを整理し、それでも食い違いが生じる場合には、学校がどうやったら児童生徒や保護者の不安を解消できるかを一緒に考えていきます。
そこに至る経緯も鳥瞰的に見てアドバイス
──「弁護士」というと、一緒に事実関係を調査して証拠を固めていく印象があります。
鬼澤 もちろんそれも大事ですが、私は起こったトラブルそのものに対して判断するのではなく、そのトラブルが起こった背景やそこに至るまでの経緯なども鳥瞰的に見てアドバイスするようにしています。
マンガのケースであれば、タケくんが「閉じ込め」という行為を起こしてしまった根本から解決できなければ、仮にタケくんの問題は解決しても、また別の学年で同じようなトラブルが起きてしまう可能性が高いです。「同級生を掃除用具入れに閉じ込めた」という行為に対しては注意が必要ですが、その日に至る経緯や、タケくん自身や他の子が誰かから同じ目に遭わされた事実はないか、教師の指導の仕方に問題はなかったのか、なども必ず検討するようにしています。