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正反対なのによく似ている点
空想の世界に遊び、そこから多くのモチーフを見出したルドン。大胆な描線と構図を操り、世俗から美を抽出したロートレック。
ふたりのタイプは正反対だ。でも、ものごとの暗い面と明るい面、裏と表の双方をひとつの画面に見事に統一してしまうところは、よく似ている。また、人の内面に潜り込んでじっくりと観察をし、無意識にかたちを与えようとしている点も同じ。
同時代を生きた表現者として、彼らはやはり共鳴している。
圧巻のルドン《グラン・ブーケ》
出品数も充分で見応えありな今展。その白眉を挙げるとすれば、やはり《グラン・ブーケ》だ。三菱一号館美術館が所蔵する、ルドンの大作である。
大画面のそこかしこに咲き誇る、色とりどりの花、花、花……。パステルによる色彩はとことん華やかなのに、どこか儚くもの哀しげな雰囲気も感じ取れる。裏側では闇を抱え呑み込んでもいるだろうことが伝わってきて、画面にいっそうの深みを与えている。
新しい年には誰の内面にも、《グラン・ブーケ》のように大輪の花が咲き誇ることを願うばかり。画面の中の花々に心奪われるひとときを、ぜひ美術館で過ごしてみたい。