文春オンライン

「官能小説を書いていると『小説は体験?』って聞かれる」 4人の女性があばく“男性の視線”

花房観音さんインタビュー#2

2021/01/08
note

ヨヨチュウさんの『ザ・面接』シリーズにぶっ飛んだ

 自分の性欲を抑圧し、“なかったこと”にしようとしてきた花房さんだったが、AV業界の巨匠として知られる監督、代々木忠氏(通称、ヨヨチュウ)の『ザ・面接』シリーズを観てぶっ飛んだ。

「今でこそ女性向けの官能小説もたくさんあるし、ネットでそういう気持ちを吐露している女の子の記事を見つけることも簡単ですけど、昔は本当に女性が自分の性を解放できるような場所がなかったから、もんもんとするしかありませんでした。

2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

 そんな時、22歳くらいだったかな。勇気を出してクリスマス・イブの日にビデオ屋で2本、AVを借りたんです。1本は著名なAV女優が出演しているもので、もう1本はヨヨチュウさんのもの。有名女優の方は完全に“作り物”という感じでしたが、ヨヨチュウさんのは“本気”でした。AVの現場で撮影されたセックスだからそこに恋愛関係も夫婦関係もないはずなのに、女の人が本気で相手に欲情していることが伝わってきたんです。

ADVERTISEMENT

 そんな女の人を見て心底ホッとして、『あ、女の自分も性欲を持ってていいんだ』とはじめて思えた。だから私がこんな風になったのはヨヨチュウさんの存在が大きいです」

2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

社会は純粋に性だけを求める女性を認めない

《売春だけではない。不倫も、罪だと糾弾し罰を与えようとするものは少なくない。

 どうして、セックスは罪になるのか。

 子どもを作る行為以外の、セックスが》

 セックスだけを目的とする女は“ヤリマン”で、彼氏(夫)とだけセックスする女は“女らしい女”として扱われる。そんな“女らしさ”という社会通念は、一体誰が、何のために作り出したものなのだろう。

2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

 世界各国では簡単に薬局で手に入る緊急避妊薬(アフターピル)が、日本ではいまだに処方箋なしでは入手できないこととも、無関係ではなさそうな気がする。

「結婚して子どもを生むのが女の幸せ、みたいに考えている女性にとって、その真反対にいる“娼婦”という存在は恐怖ですよね。男性にとっても、自分の思い通りにならない女なので、やっぱり脅威でしょう。

 性的な満足を得たいがためにAV女優をしている人もいるし、いろんな男としたいから風俗に勤めている女の人だっている。女がセックスを求めるのは愛やお金だけが理由じゃないことだってあるのに、なぜか社会は、純粋に性だけを求める女性を認めません。そして第三者が声高に、性的搾取だとか強制されている、性風俗などこの世から無くなってしまえなどと言う。もちろんそういう側面を、見ないふりしてはならないし、改善されるべきだけど、全てひとくくりにして糾弾されるのは胸が痛みます。