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「官能小説を書いていると『小説は体験?』って聞かれる」 4人の女性があばく“男性の視線”

花房観音さんインタビュー#2

2021/01/08
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イロモノ扱いしてくるような男とは最初から関わらない方がいい

 私は官能小説も書いているので、飲み会に行くと知らないオッサンから『小説で書いたことって体験?』って何回も聞かれるんです。じゃあSF作家は宇宙に行かなきゃいけないし、ミステリー作家は人殺しじゃなきゃ書けないってことになるけど、そんなわけないですよね。

2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

 小説で官能を書いているからといって、自分の性的な部分しかフィーチャーされないのはすごく嫌です。でもそう言いながら、女として見られたい、求められたい自分もいる。まあでも、性的なことを作品にしている時点で女らしくもないし、過去の体験をペラペラ喋る私のような女は面白がられはするけど、普通の男はやっぱり引きますよ。

 でも私をイロモノ扱いしてくるような男とは最初から関わらない方がいいし、社会的に見て女らしくなかったとしても、自分で女だって認めていればいいんじゃないかなって思ってます」

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2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

結婚とエロスを両立させることは可能か

 2010年に作家デビューした花房さんは翌年、同じく文筆業者の男性と結婚した既婚者でもある。性愛に向き合うことと結婚は相容れない気がして、意外に感じた。

「私が書いた小説を彼は一切、読みません。それは気を遣っているとかじゃなく、単純に小説が苦手だからという理由なんですけど、彼自身も物書きなので、その辺は自由にさせてくれますね。家事を求められることもありませんし、束縛も一切ないです。

2015年当時の渡鹿野島(花房観音さん提供)

 というか最初から、『君は作家だから他の男とセックスしても構わないけど、わざわざそれを僕に報告しなくていい』と言われました。

 そうなると籍を入れなくてもいいのかもしれませんが、私にとって結婚という制度は合理的でした。結婚したら、『なんで結婚しないの?』と言われずに済みますし、楽になりましたね」

 家事・育児の分量でギリギリの攻防が続く我が家には長らく、エロスが入り込む余地がない。そんな結婚8年目を過ごしている筆者は、人生100年時代の今後をどうすればいいかわからずにいる。花房さん、結婚とエロスを両立させることは可能でしょうか……。

「人それぞれですが、両立しにくいと思います。どうしてもしたければ、もう外でやるしかないでしょうね。家族を傷つけないよう、やるなら絶対バレないように、リスクを覚悟しての上ですけど。