首都圏の「愛されている街」に住みたい
とはいえ、全く通勤から解放されすべてリモートワークで仕事ができるようになった人は稀だ。ならば首都圏の中で居心地のよい街に住みたいと考えるのは自然だ。
そこで注目されたのが、昨年SUUMOが発表した、毎年恒例の「住みたい街ランキング関東版」の中で、従来の「住みたい街」に加えて初めて発表した「住民に愛されている街(駅)」ランキングだ。ここで第1位に輝いたのが、神奈川県の片瀬江ノ島である。横浜の馬車道(2位)や東京の代官山(3位)、麻布十番(6位)などすぐにでも思いつきそうなブランド立地を抑えての堂々の第1位である。また片瀬江ノ島とほぼ同じ生活圏にある、鵠沼(8位)、鵠沼海岸(10位)、湘南海岸公園(26位)などエリア全体が上位に入ったのだ。
別荘地として開発されたエリア
このエリアは明治時代頃に別荘地として開発された地だ。また関東大震災後は政治家や文豪たちが好んで邸宅を構え、一区画は700坪から2000坪程度もあったという。今でも街を歩くととんでもなく広い敷地のお屋敷に出くわすが、この時代の名残である。
1960年代以降はベッドタウン化がすすんだが、首都圏によく見られる山野を切り開いたニュータウンではなく、大きなお屋敷が相続などで徐々に細分化され、そこに東京に通うサラリーマン世代が住みついたため、街の新陳代謝がほどよく進んだのである。
このエリアは穏やかな相模湾に面し、温暖で実に風光明媚なところだ。鵠沼海岸に出ると真正面に海が広がり、左手に江の島、右手にエボシ岩、その先に富士山を臨む。冬は相模湾の先に大島、利島を見ることもできる。この街の特徴は、「空が広い」そして「街が明るい」ということだ。湘南エリアが明るいのには理由がある。南に向かって海があるために、東から昇った太陽が西に沈むまで一度も日陰にならず、一日中燦燦と陽が降り注ぐのである。同じサーフィンのメッカ、九十九里浜では海が東側に面しているので日中を過ぎると日が陰りやすくなってしまう。湘南はいつでも明るいのは地勢的な理由なのだ。もう一つの要因としてあげられるのは、片瀬江ノ島駅周辺を除いて高い建物がないことだ。これらの理由で空が堂々としていて広いのだ。