昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

“8カ月で新宿三井ビル約7棟分の空き室発生” それでもビルオーナーに危機感がないワケ

2023年にはオフィス大量供給時代が到来

2020/12/01

 オフィスビルを賃借しているテナントの面積縮小、解約の動きが止まらない。三鬼商事の発表によれば、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のワンフロアの貸付面積が100坪以上のビルを対象としたオフィスビルの空室率は、20年10月時点で3.93%、貸手と借手のどちらが優位に立てるかの分水嶺といわれる4%に限りなく近づいてきた。

※写真はイメージ ©️iStock.com

空室率はわずか8カ月の間に2.44ポイントも悪化

 オフィスビルマーケットはアベノミクスの恩恵を受けた大企業を中心とした業績の伸びを背景に2015年以降くらいから目に見えて空室率が下がり続け、20年2月時点で1.49%という空前絶後の水準にまでなっていた。

 ところがコロナ禍による緊急事態宣言を受けて、多くの企業で在宅勤務を前提としたテレワークが行われるようになると、まずはIT系企業を中心にオフィスの面積を縮小したり、解約してもっと小さな面積のビルに移転する動きが顕著となった。

 その結果、空室率はわずか8カ月の間に2.44%も悪化してしまった。これは面積としては、19万坪(三鬼商事のデータベースは0.1ポイントで約7800坪)もの空室が発生したことに相当する。たとえて言えば、新宿の55階建ての超高層ビル、新宿三井ビル約7棟分に相当する面積が空室になったことになる。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 ところが今のところ、こうした大型ビルのオーナーである大手デベロッパー首脳からは、今後のオフィスビルマーケットについて危機感を持った発言は聞かれない。というのも現在、面積縮小や解約が相次いでいるのは、IT系企業の中でも比較的身動きがとりやすい中小企業が中心であり、賃借面積も小さいのでその動きは顕著なものではないというものだ。また、コロナ禍が過ぎ去れば、多くの企業ではテレワークをやめて社員をオフィスに戻すため、あくまでも現在の動きは「一過性」にすぎず、むしろコロナ後の経済のV字回復でオフィスに対する需要は再び活発になると断言する首脳もいる。