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 同時にバイデンは着々と組閣を進めており、現在、閣僚と高官に指名されている24名には女性10人、黒人5人、ラティーノ3人、インド系1人、中国系1人、ネイティヴ・アメリカン1人、ユダヤ系7人、移民2人が含まれている。トランプ内閣、およびトランプが指名した判事の圧倒的多数は白人男性であり、180度の転換となる。そもそも副大統領となるのが、黒人とインド系のミックスであるカマラ・ハリスだ。トランプ支持者の多くにとって、許容できることではない。 

デモで掲げられた旗と人種差別の関係

 アメリカは欧州からやってきた白人がネイティヴ・アメリカンを虐殺し、黒人を奴隷としたことにより繁栄した国だ。国の土台がマイノリティの蹂躙なのである。それでも時代と共に徐々に多様化が進み、2009年、米国史上初の黒人大統領を持つに至ったが、それは白人の優位性を信じて疑わない者たちには耐え難い屈辱となった。 

オバマ前大統領は「機能的で賢い政府」を主張した(ホワイトハウスHPより)

 昨年11月の選挙で当選した新進の下院議員コリ・ブッシュ(黒人女性)は、今回の暴動の際に暴徒が掲げていた「南軍旗」「Don’t Tread on Me旗」「Blue Lives Matter旗」「トランプ旗」のすべてがレイシズムと白人至上主義を表していると語っている。 

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 南軍旗は奴隷制をしいていた米国南部の歴史をプライドとして今に引き継ぐ旗だ。かつては南部の多くの州が州旗としていたが、黒人差別の象徴でもあることから徐々にデザイン変更を余儀なくされ、昨年11月に最後のミシシッピ州旗のデザインが変えられたところだ。 

 Don’t Tread on Me旗(別名Gadsden旗)は黄色地にガラガラ蛇を描いている。18世紀のアメリカ革命に由来するが、現在では極右や白人至上主義グループなどに使われている。 

 Blue Lives MatterはBLMによって悪者にされたと感じた警官が「警官の命も大切だ」と作り上げたフレーズ。旗は警察を表す青、および黒で星条旗を塗り替えたデザイン。 

 トランプは大統領となる以前の不動産業者時代より黒人にアパートを貸さない、経営するカジノで黒人従業員を冷遇、14~16歳の黒人/ラティーノ少年に死刑を求めるなど人種差別主義者として知られる。 

トランプ大統領 ©JMPA

 こうした歴史背景を持つアメリカゆえに、白人至上主義者たちは社会の多様化によって自身の優位性を無くす恐れに囚われ、大統領の存在意義すら分からなくなり、トランプを当選させてしまった。彼らはトランプ政権の4年間を楽しんだものの、同時にトランプの一国のリーダーとしての資質の無さによるコロナ禍の蔓延など、自身も被害を被ることとなった。だが、そこにはあえて目を瞑ってコロナ禍すら否定し、ついには今回の暴動を起こしてしまった。 

 バイデンの大統領就任式まであとわずかな日数だが、その間に何が起こるのか、もはや誰にも予測はできない。